著 者:有川浩
出版社:角川書店
出版日:2008年6月25日 初版発行 2009年5月20日 4版発行
評 価:☆☆☆(説明)
著者のデビュー作「塩の街」に続く、デビュー2作目。メディアワークスから単行本、後に角川文庫から文庫版が出版された。私は文庫版で読んだ。
私は「図書館戦争」を読んで以来、それ以降に出版された作品を全部読んできた(アンソロジーや文芸誌などの収録作品には未読のものもある。最新刊「空飛ぶ広報室」はこれから)。それにも関わらず、初期の作品にはあまり興味がなかった。だから「自衛隊三部作」という言葉は知っていても、長い間この本を手に取らなかった。
そしてこの度、手に取って読んで真っ先に思ったことは、「こんな大作だとは思ってなかった」ということ。「塩の街」は面白かったけれど、軽めのシンプルな恋愛(+ミリタリー)物語だったので、本書もそうだと思っていたのかもしれない。しかし本書は、色々なものが練り込まれた作品だった。
主人公は、高知県に住む高校生の斉木瞬と、航空機開発の技術者の春名高巳の2人の男性。物語の冒頭で、試験飛行中の民間の超音速ジェット機と、航空自衛隊の戦闘機が相次いで炎上する原因不明の事故が起きる。それも、四国沖の高度2万メートルの上空という同じ場所で。瞬はその犠牲者の戦闘機パイロットの息子で、高巳は民間機の事故調査委員だ。
航空機の同じような事故の関係者という以外には、この二人に接点はなく、当初は別々の物語が綴られる。それぞれにヒロインが登場して、著者お得意の「さっぱり進展しないもどかしいラブストーリー」が始まる。そこにかなりぶっ飛んだUMA(未確認生物)が絡み、人類の危機を招く切迫した事件が起き、冷徹な美少女が新たなプレイヤーとして登場する。上から目線で恐縮だけれど、著者の2作目への熱意が感じられる周到なストーリー展開だ。
最後に。著者の「おっさん萌え」を知っている私には、著者にとってのこの物語のキーパーソンがすぐに分かった。文庫版に収録された「仁淀の神様」という掌編に、著者の想いがあふれている。
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