著 者:有川浩
出版社:文藝春秋
出版日:2012年11月15日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
有川浩さんの最新作。ベタ甘ラブストーリーでもなく、カッコいいおっさんの痛快物語でもなく、甘酸っぱい青春群像劇でもない。本書は、悲しいほどに切ない物語だった。これまでの著者の作品で探せば「ストーリー・セラー」に近い。私はこの手の話が苦手だ。読んでいて辛くなってしまう。
主人公はオス猫のナナ。しっぽがカギ型に曲がっていて、数字の7に見えるから、飼い主のサトルに名付けられた。ナナは、独立心の強い野良だったけれど、命を救ってくれたサトルの猫になることにした。サトルの方にもナナを求める理由があった。ナナとサトルは5年間をともに暮らし、その絆は深く強いものになっていた。
ここまでが、この物語が始まる前のこと。サトルがナナを手放すことになり、ナナの引取り先を求めての旅を、本書は描く。それは、サトルが小学生、中学生、高校生の、それぞれの時の友達のところ。つまり、図らずもこの旅はサトルの人生を辿る旅でもある。そこに、サトルの友達のその後の人生が重なり、重層的なしみじみとした物語に仕上がっている。
ナナの猫目線の語りや、他の動物との会話にユーモアがあり、けっこう楽しく読める。ただし、訪ねてきたサトルに友達が敢えて聞かない「ナナを手放す理由」に、動物たちは気がついている。読者は、彼らの会話からそれを知ることになる。その瞬間、物語から音が消え、空気がピンと張り詰めた。
コンプリート継続中!(アンソロジー以外の書籍化された作品)
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「旅猫リポート」読みました。ベタ甘でなく、自衛隊ものでもなく、また違った有川浩作品を楽しめました。
最後はちょっと切なかったです。
珠里さん、コメントありがとうございます。
いつもと違う有川作品でしたね。
私は「いつもの」の方が好きなんですけれど、
これはこれでしみじみと心に沁みる物語でした。