著 者:三浦しをん
出版社:集英社
出版日:2013年8月31日 初刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
最近は、出す作品が必ずと言っていいほどヒットする著者の最新作。
タイトルの漢字2文字は2人の主人公の名の1文字ずつだ。有田国政と堀源二郎。2人とも御年73歳。墨田区Y町という荒川と隅田川に挟まれた町で共に暮らしてきた。「幼馴染」という言葉で表すにはあまりに長い付き合い。
気心の知れた2人だけれど、その生い立ちはずいぶん違う。国政は銀行員として定年まで勤め上げた。言わば堅い人生。源二郎は子どものころに「つまみ簪(かんざし)」職人に弟子入り。以来その道一本で来た職人。傍から見ると「自由人」そのものだ。
物語は6章からなり。夏から少しずつ季節が移ろって翌年春までの、1年足らずの期間の出来事をつづる。途中で挿入される2人の子供時代のことや、それぞれの結婚にまつわるエピソードが、現在の2人の関係に通じていて、しみじみとさせられる。
「しみじみ」の一方で、突然「笑いのツボ」を刺激されて、呼吸困難に陥る。主な原因は源二郎の言動にある。冒頭の葬儀のシーンで登場した源二郎は、禿頭の耳の上に僅かに残った頭髪を「真っ赤」に染めている。こんな「自由な」源二郎が大真面目にやるあれこれが面白すぎる。
73歳になってもつまらないことで喧嘩をしたり拗ねたりと、子どものようだ。2人の境遇はそれぞれに寂しさを抱えている。それでも願わくば、このような年寄りになってみたい...
第1章の扉絵を見て「じいさん萌えかよ!」と声が出た。少女漫画のイケメンキャラのようなじいさんが2人。カッコよすぎる。
そうそう「つまみ簪」がわからない人は、Yotubeで「つまみ簪」と検索するといくつかの動画が表示されるので、見てみるといいと思う。
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「政と源」三浦しをん
簪職人の源二郎と元銀行員の国政は、ふたり合わせて146歳の幼なじみ。弟子の徹平と賑やかな生活をおくる源二郎と、男やもめの国政を中心にまき起こる、人情味豊かで心温まる事件の数々。
下町を舞台に繰り広げられる人情物語。三浦しをん、新境地!
東京都墨田区Y町。つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平(元ヤン)の様子がおかしい。どうやら、昔の不良仲間に強請られたためらしい。それを知った源二郎は、幼な……