陽だまりの彼女

著 者:越谷オサム
出版社:新潮社
出版日:2011年6月1日 発行 2012年6月15日 19刷
評 価:☆☆☆(説明)

 「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」というコピーが評判となってベストセラーになり、少し前に「90万部突破!」というニュースが流れた。10月12日には、松本潤さん、上野樹里さん主演の映画が公開される(上野樹里さんはハマリ役だと思う)。100万部は堅いだろう。

 主人公は奥田浩介。25歳で鉄道広告の代理店の営業マン。物語の冒頭に渡来真緒という中学の同級生と10年ぶりに再会する。営業マンとクライアントの広報担当として。「学年有数のバカ」と呼ばれていた真緒は、美しい「出来る女」になっていた。

 「学年有数のバカ」と、真っ当に付き合っていたのは浩介だけだった(浩介は「キレる危ない子」だったらしい)。そのため真緒は、浩介のことを憎からず思っていた。浩介の方も同じくで、しかも真緒がハッとするぐらいの美人になっていたのだから、二人が恋人同士になるのに時間はかからなかった...。

 お互いに気になっていた中学の同級生と偶然の再会。障害を乗り越えいたわりあって愛を育む。まぁこれだけじゃ単なるベタベタの恋愛小説で、ちょっと読むに堪えない。本書の場合は、真緒には秘密と隠された過去があるらしく、それがミステリーの要素や、感涙を誘う仕掛け、さらにはファンタジーにもなっている。そこが「ベタベタ」に留まらないプラスアルファ部分で、読むに堪える作品に仕上がっている。

 「読むに堪える」なんて失礼な言い方をしてしまったが、実際のところは結構楽しめた。その上で、本書にケチを付けるつもりはないのだけれど、100万部に達しようとするのは、ひとえに「コピーの力」だと思う。出版社のニュースでも、そのようなことが書いてあるので、間違いないだろう。「女子が男子に読んでほしい」なんて..男の弱みをガッチリ掴んでいる。

 ただ本当に「女子が男子に読んでほしい」本なのかは疑問。そう言うからには、女子の気持ちが描かれていそうだけれど、女性の目線がほどんど感じられない。それは、主人公が男だから仕方ない部分はあるけれど、それにしても男に都合がよすぎる気もする。皮肉を言うと「男が考える「女子が男子に読んでほしい本」」が妥当なところか。

 映画「陽だまりの彼女」公式サイト

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陽だまりの彼女”についてのコメント(1)

  1. 風竜胆の書評

    映画 陽だまりの彼女

     越谷オサムの同名小説を映画化した「陽だまりの彼女」。主人公の奥田浩介とヒロイン渡来真緒の、不思議で、コミカルで、ちょっと切ない愛の物語を描いた作品だ。
     交通広告代 …

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