編 者:中野剛志
出版社:集英社
出版日:2013年6月19日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
最近TPPが気になって、少し詳しく知りたいと思って、本を探していて本書が見つかった。詳しく知りたいと思ったわけは、TPP交渉には守秘義務があるとかで、交渉内容が一切報道されない(できない)ため、何がどうなっているのか全く分からなくて不安になったからだ。
タイトルから容易に想像できる通り、本書はTPPに反対派の立場をとる本だ。こんな本を読んだのでは不安は増すばかりだけれど、少なくとも問題点は把握できるし「最悪の事態」の想像がつく。もう当分選挙はないのだけれど、万が一の意思表示の機会のために、自分の意思をまとめておくこともできる。
TPPは政治的な問題なのでいろいろな思惑が絡んで、表明される意見の中にはセンセーショナルに煽るだけのものもある。本書のタイトルにも、シンプルな中にTPPに対する悪意が感じられる。ただし内容は論理的な信頼に足るものだったと思う。
本書の要旨は明快だ。TPPは、環太平洋圏の各国が互恵的な利益を得られる自由貿易のルール作りなどではなく、アメリカの輸出と雇用を増やすための「アメリカの国家戦略」なのだ、ということだ。だから当然に、それに乗っかってしまうと、日本が失うものの方が大きい。
その「アメリカの国家戦略」を端的に言うと、「各国の市場(社会と言ってもいいかも)を、アメリカの企業がビジネスをやりやすいように変えよう」というものだ。つまりは、1980年代の「日米貿易摩擦」の際に、大規模店舗法とか自動車の厳しい安全基準を、「非関税障壁」としてやり玉にあげたのと同じことだ。
守秘義務のために報道することがないのか、「重要5項目の関税撤廃の検証」発言が公約違反か否か、なんて大きく報じているけれど、(農家の皆さんには重大事ではあっても)関税撤廃の問題は、TPPで被る影響の一部分でしかない。そのことが分かっただけでも、本書を読んでよかったと思う。
それにしても不思議に思う。バランスを保つために、TPPに賛成の立場の探したけれど見つからなかった。出版物を見る限りは圧倒的に反対の声が大きい。それなのにどうして政府はこんなに「前のめり」なのだろう?
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こんにちは。
ブログ村トラコミュから来ました。
「TPP 黒い条約」は気にはなってるんですが最近読みたい本が多いのではまだ読めていません。値段も高くないし読みたいとは思ってるんですが。
私が最近読んだ本の一押しは元外交官の馬渕睦夫さん著「国難の正体」です。
世界に押し寄せるグローバリズムとは何か、公開された資料を読み解くことで真相に迫っていて今の国際あるいは国内問題について考える上で示唆に富んだ内容だと思います。
知的好奇心も刺激され次々ページをくりたくなります。
機会があれば是非読んでみて下さい。
プラモデル工作員さん、コメントありがとうございます。
TPPはよく分からないけれど興味がある、という方に本書はおすすめです。
アンチTPPの本なので偏りはあると思いますが。
「国難の正体」ですね。今度探してみます。