著 者:高田郁
出版社:角川春樹事務所
出版日:2011年3月18日 第1刷発行 2014年5月18日 第16刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「みをつくし料理帖」シリーズの第5作。「浅蜊の御神酒蒸し」「菜の花尽くし」「寿ぎ膳」「ひとくち宝珠」の4編を収録した連作短編。
主人公の澪は、江戸の元飯田町にある「つる家」という料理屋の板前。彼女には、かつて修業した「天満一兆庵」の再興と、今は吉原にいる幼馴染の野江と昔のように共に暮らす、といった2つの望みがある。
今回は、「つる家」の主人の種市が抱える過去や、「天満一兆庵」の若旦那の消息などが分かり、澪の友人の美緒が人生に新たな一歩を踏み出す。また、料理勝負のようなイベントや、初めて澪が登場しない作品、といった趣向が楽しめる。これまでのシリーズの中でも出色の作品だと思う。
特に、種市の過去を題材にした「浅蜊の御神酒蒸し」は、緊迫感と劇的な展開で読みごたえがあり、5作目にして迎えた大きなヤマを感じた。また、澪の想い人の小松原を主人公にした「ひとくち宝珠」は、面白い試みで物語の広がりを予感させた。
シリーズは10作で完結の予定らしい。すると本書が前半の掉尾ということになるのだろう。この盛り上がりはそれにふさわしい。
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