劣化する日本人

書影

著 者:香山リカ
出版社:KKベストセラーズ
出版日:2014年7月20日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の意見は私の考えと親和性があるらしく「その通りだ」と思うことも多く、本を読んで「なるほどそうか」と気付かされることもある。「ネット王子とケータイ姫」「しがみつかない生き方」がそうだった。全部読むつもりは全くないのだけれど、新刊が出ると気になって時々手に取って読んでみている。

 タイトルが挑戦的だ。誰だって「劣化する(した)」と言われていい気持ちはしないだろう。ただ「昔の日本人はこんなじゃなかった」という言い方は時々耳にするし、私も日々の暮らしの中やニュースに接してそう思うこともある。定量的な根拠はないのだけれど、少なくとも日本人は「変わった」んじゃないかと思う。

 著者はまず「劣化」の象徴として、小保方晴子さん、佐村河内守さん、片山祐輔被告らと、その事件を挙げる。科学の世界の頂点であんなズサンなことをする人がいるなんて、芸術の分野にあんな詐欺師がいるなんて、テレビに出てあんなに堂々とウソをつくなんて..「昔の日本人だったら考えられない!」というわけだ。

 その上で、これらの人は「突発的に生まれたモンスター」ではないとして、今の社会の「自分のことしか考えない」風潮を後半で考察する。この考察の部分はこれまでのように「その通りだ」「なるほどそうか」と思うことがあった。しかし前半の個々の事件の分析は、私としてはいただけなかった。

 その理由は、精神科医として知識の使い方に違和感、もっと言えば不快感を感じたからだ。「これは推測だが」「一般論だが」と但し書きをしながらであるが、それぞれの人に精神医学的な分析と評価を加えている。あとがきで「医療の倫理をやや逸脱した行為かもしれないが(中略)社会的意義を鑑みてあえて踏み切った」と説明はあるが、面談もせずに事実上の診断を加えそれを公表する行為はやはり不愉快だった。

 特に小保方さんに対する評価は容赦がなく、家族の職業まで持ち出して「自己愛パーソナリティ」の見立てを補強している。STAP現象が未だ「検証実験」の段階にある中で執拗な追い込みをする。「これは推測だが一般論として」こうしたことをする人は、小保方さんのことが「気に入らない」人なのではないか?と言えると思う。

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