流星ワゴン

著 者:重松清
出版社:講談社
出版日:2005年2月15日 第1刷発行 2014年12月24日 第59刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者の作品は、いつも少しホロッっとくる。時には心揺さぶられる作品に出会うこともある。本書は「本の雑誌」2002年度の年間ベスト1になった作品。

 主人公は永田一雄、38歳。結婚して14年、中学1年生の息子がいる。妻のこと息子のこと仕事のこと、いろいろなことが上手く行っていない。「死のう」と決めるほどの気力もなく、「死んじゃってもいいかなあ、もう」などと考えながら終電で帰って来て、駅前のロータリーのベンチに座っているところから物語は始まる。

 一雄の目の前にワゴン車が止まる。ワイン色の古い型のオデッセイ。ドアが開いて「早く乗ってよ。ずっと待ってたんだから」と催促される。声の主は健太くん。車を運転していたのは健太くんのお父さんで橋本さん。...二人は5年前の交通事故で亡くなっていた。

 つまりどういうこと?一雄はもう死んでるの?そういうことは曖昧なまま物語は先に進む。橋本さん親子の説明によると、このワゴン車は、一雄にとって「たいせつな場所」に連れて行ってくれる、という。地理的な意味だけでなく、時間的にもたいせつな場所。「あれが分かれ目だった」と思うような場所に。

 すぐに「ああそうか。「タイムスリップ+やり直し」モノだな」と思ったけれど、どうやら単純にやり直しができるわけではなく、かと言って全然できないわけでもなく、もう少し複雑。この複雑さが、良く言えば物語に奥行や余韻を持たせている。悪く言えば設定が混乱しているように感じる。

 一雄がオデッセイに運ばれて、何か所かの「たいせつな場所」に行き、何かをしたり何かを見つけたりする。ほんの些細なことだけれども、それがとても大切なことなのだと、一雄も読者も知ることになる。

 私は、幸いなことに「死んじゃってもいいかなあ」と思ったことはないけれど、いつも順風満帆でもない。私の人生にもたくさんの分かれ目があったことが、今なら分かる。これからはできれば、分かれ目に気が付けるように、耳を澄まし目を開いておきたいと思った。本書にはホロッっときた。

※本書を原作としたテレビドラマがTBS系で、1月18日(日)から放映されます。
日曜劇場「流星ワゴン」公式サイト

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