著 者:辻村深月
出版社:マガジンハウス
出版日:2014年8月22日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆☆(説明)
本屋大賞ノミネート作品。著者は昨年も「島はぼくらと」でノミネートされている。それより前に「鍵のない夢を見る」で2012年上半期の直木賞を受賞している。前々から気になっていたのだけれど、著者の作品を読むのはこれが初めて。
舞台はアニメ業界。タイトルの「ハケンアニメ」は、「そのクールで作られたたくさんのテレビアニメの中で一番成功したアニメ」のこと。つまり「覇権アニメ」。本書は、アニメ業界でその「ハケンアニメ」を競う2つの作品に関わる3人の女性の物語。
1人目は有科香屋子。30代半ば。中堅アニメ制作会社「スタジオ・えっじ」のプロデューサー。2人目は斎藤瞳。20代半ば。大手アニメ制作会社「トウケイ動画」のアニメ監督。3人目は並澤和奈。こちらも20代半ば。新潟県のアニメ会社「ファインガーデン」で原画を描くアニメーター。
とてもとても面白かった。装丁も内容もライトノベル風。しかし「お仕事小説」として、主人公3人の仕事に対する想いとか姿勢とかがしっかりと伝わってくる。アニメという「ひとりで楽しめるもの」が必要な人たちへの承認も感じられる。
心に引っかかるセリフや描写も上手い。「この世の中は繊細さのない場所だよ」。瞳が知り合いの小学生に言う言葉だ。「それでもごくたまに、君を助けてくれたり、わかってくれる人はいる」と続く。ストレートなメッセージも仕込まれている。
アニメ業界や製作の流れを少しは知らないと戸惑うかも。そんな方のために少しだけ。アニメは徹底した分業と人海戦術で製作される。原理は「パラパラアニメ」と同じだから、1秒に何枚もの絵が必要で、それらはアニメーターが手で1枚ずつ描く。
さらに背景を描く人も別、色を付ける人も別で、もちろん1枚ずつ着色する。1つのアニメ作品に関わる人は膨大な数に上る。乱造気味に思えるアニメ作品だけれど、一つ一つの作品には、関わった人の膨大な数の想いが載せられ、されにそれに見る側の想いも重なる。
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「ハケンアニメ!」辻村深月
監督が消えた! ?
伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。
プロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。
同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。
ハケンをとるのは、はたしてどっち?
そこに絡むのはネットで話題のアニメーター・並澤和奈……