イギリス人アナリスト日本の国宝を守る

著 者:デービット・アトキンソン
出版社:講談社
出版日:2014年10月20日 第1刷 2015年1月19日第6刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者は英国人。アンダーセン、ソロモン、ゴールドマン・サックスと、外資の超メジャーを渡り歩いた敏腕のアナリスト。確かにスゴい経歴なのだけれど、著者が異色なのは、現在は、国宝・重文の補修を手掛ける創業300年を超える日本の会社の会長兼社長だということだ。

 本書のタイトルは、上に書いたことを端的に表しているのだけれど、本書の内容を表してはいない。本書にはサブタイトルが付いていて、それは「雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言」。こちらの方が本書の内容に近い。

 日本の、経済のこと、金融業界のこと、経営者のこと、社会のことなどを、アナリストらしく数字をあげて分析していく。それらのいくつかは、私たちがよく知っている分析とは異なっていて「なるほどそうか」と思わせる。まぁ傾聴に値すると思う。

 例えばGDP。日本は戦後に急速な経済成長を成して、世界第2位の経済大国になった。私たちに耳馴染のある解説は、日本人の勤勉さや技術力の高さを理由としたもの。しかし彼の意見は「人口が多いのだから当たり前だ」とニベもない。そして確かに著者が示した人口とGDPのそれぞれの順位は、欧米と日本を見る限りは完全にイコールだ。

 ちょっとだけ自慢させていただくと、GDPと人口の相関には私も気が付いていた。GDPで中国に抜かれた時にだ。かの国は13億人超もの人がいる。日本の10倍以上だ。10分の1の生産性でチンタラと仕事していても負けてしまう。そう考えるとGDPに何の意味があるのかと思ってしまう。

 上に書いた「傾聴に値する」というのは本心だけれど、読んでいて不愉快に思うことも多かった。「痛いところを突かれた」ということもないではないけれど、相当な曲解や短絡的な見方を感じたからだ。アナリスト時代に金融の経営者たちと度々衝突したそうだけれど、その様子が想像できる。

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