1G.M・ペイヴァー

神々と戦士たち5 最後の戦い

書影

著 者:ミシェル・ペイヴァー 訳:中谷友紀子
出版社:あすなろ書房
出版日:2018年2月28日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

5巻にわたる物語を読み終えて「あぁ面白かった」と感じた本。

神々と戦士たち1 青銅の短剣」からはじまるシリーズの5巻目にして完結編。舞台は、前卷の古代エジプトから古代ギリシアのアカイアに、それも物語が始まった場所のリュコニアに戻ってくる。

主人公のヒュラスは、リュコニアの山のヤギ飼いで金髪の「よそ者」と呼ばれていた。「よそ者が剣をふるうとき、コロノス一族はほろびるだろう」というお告げのために、コロノス一族に襲われ、妹のイシともはぐれた。物語はこれまで、コロノス一族とヒュラス、ヒュラスと行動を共にするピラの追いつ追われつを描いて来た。それは本書も引き続く。

「よそ者がふるう剣」とは、コロノス一族の宝である短剣。前卷でヒュラスは、一度はコロノス一族の手を離れたその短剣を、ピラの命を救うためにコロノス一族のテラモンに渡してしまった。そのために、コロノス一族の勢力は隆盛を極め、アカイア全土を制圧するに至ってしまった。

これまでの物語で提示された関心は、この短剣をいかにコロノス一族から奪って処分するのか、それによるアカイヤの解放、妹のイシとの再会、ヒュラスとピラの関係、といったところに絞られている。

そして本書は「完結編」であるから、それらのことに決着が付く。見事な決着だった、と言っておこう。かつては親友であったヒュラスとテラモンの関係(立場が分かれた後も、相手を手助け場面はあった)、が気になっていたのだけれど、「あぁこうしたんだ」とその結末に得心した。

完結編としての本書も、シリーズ全体もとても楽しめた。実は、指輪物語を思い出させるシーンもあった「この物語も映像化したら面白いだろうな」と思った。

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神々と戦士たち4 聖なるワニの棺

書影

著 者:ミシェル・ペイヴァー 訳:中谷友紀子
出版社:あすなろ書房
出版日:2017年5月30日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 いやこれは大冒険だな。テレビシリーズとかにすると面白そうだ、と思った本。

神々と戦士たち1 青銅の短剣」からはじまる全5巻シリーズの4巻目。物語の時代は青銅器時代。前卷までは古代ギリシアが舞台だったけれど、今回の舞台はエジプト。登場人物の会話の中に、王の「ペラオ(たぶんファラオ)」とか、ジャッカルの頭を持つ「アヌプ(アヌビス)神」とか、古代エジプトっぽい名前が出てくる。

 主人公の少年のヒュラスたちを追うコロノス一族、その運命を握る短剣というのがある。前卷で、ヒュラスの友達で大巫女の娘のピラ、その世話係のエジプト人が、短剣を持ってエジプトに逃げ込んだ。その短剣を追って、ヒュラスもピラもコロノス一族も、遠く船に乗ってエジプトに来た、というわけ。

 そんなわけで、今回の物語は、ヒュラス+ピラのチームと、コロノス一族のチームの短剣争奪戦だ。コロノス一族の方は「ペラオ」に貸しがあるらしく、衣食住に船、密偵までつけてもらっている。ヒュラスたちは乗ってきた船から放り出されて、焼け付く太陽の下で1日分の水袋しかない状態からのスタート。圧倒的に不利で勝ち目がないように見える。

 面白かった。ワニやカバに襲われたり、アフリカの少年に助けられたり。舞台を移すことで、異国らしい展開が得られた。サソリに刺されたヒュラスの手当てをした村人たち、ピラの世話係の出身地で祭祀を行う職人たち、ペラオの命を受けた一帯の支配者、様々な人々が関わってくる。一帯の支配者はコロノス一族の側、職人たちはヒュラスの側、かと思うと、それぞれの思惑で騙したり見捨てたりしたかと思うと助けたり。そう単純ではない。

 ヒュラスのことを「少年」と書いたけれど、14歳だから「少年」でいいのだけれど、表紙に描かれたヒュラスはたくましい青年だ。ピラも14歳で「ふつうなら結婚する年頃」だそうだ。ヒュラスのことを「なにをためらっているんだろう?」なんて考えている。

 あと1巻。さてどうなるのか?

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神々と戦士たち3 ケフティウの呪文

書影

著 者:ミシェル・ペイヴァー 訳:中谷友紀子
出版社:あすなろ書店
出版日:2016年11月30日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 山育ちの少年のサバイバル能力がハンパないな、と思った本。

 「神々と戦士たち1 青銅の短剣」「2 再会の島で」に続く、全5巻シリーズの3巻目。舞台は青銅器時代の古代ギリシアで、主人公はヒュラスという名の少年。幼いころに妹と一緒に山で拾われて、以来「よそ者」として暮らしていた。「よそ者がその短剣を振るうときコロノス一族は滅びる」という巫女のお告げのせいで、一帯に勢力を持つコロノス一族から追われ、前作では追い詰められて絶体絶命の危機に陥っている。

 今回の物語は、ヒュラスがケフティウ島にたどり着いたところから始まる。ケフティウ島はヒュラスの友達のピラが居る場所で、神殿がある豊かで大きな島だった。「だった」と過去形なのは、ヒュラスが見た島はうす気味悪く静まり返った生き物の姿が見えない「死の島」だった。どうやら疫病に襲われたようだ。

 ヒュラスはこの島にピラを探しに来た。少し先になるけれど、ヒュラスはピラともハボックとも再会する。望んでもいないのにヒュラスたちを追い回すコロノス一族も島にやってくる(まぁそうじゃないと盛り上がりに欠けるけれど)。物語は、ヒュラスたちのそれぞれを順に、再会後はコロノス一族からの逃避行を描く。この島には意外とたくさんの人がまだ生きていた(味方とは限らない)。

 今回はピラの成長に目を瞠った。ピラの母親は、この島の神殿の大巫女で、島を襲った災難を鎮めるために落命した。大巫女は世襲ではないし、娘だからと言ってその力が備わっているわけではない。ピラは大巫女の母を嫌っていたし、大巫女になることなど望んでもいなかった。しかし、他にはいないのだ...。10代の少女の決断に胸を揺さぶられる。

 ヒュラスとピラが仲良くというか、お互いに「好き」って感じになってる気がする。

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神々と戦士たち2 再会の島で

書影

著 者:ミシェル・ペイヴァー 訳:中谷友紀子
出版社:あすなろ書店
出版日:2015年10月30日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 前を読んでからずいぶん経つのに、そういうブランクを感じないでとても楽しめた本。

 「神々と戦士たち1 青銅の短剣」に続く、全5巻シリーズの2巻目。舞台は青銅器時代の古代ギリシアで、主人公はヒュラスという名の13歳の少年。幼いころに妹と一緒に山で拾われて、以来「よそ者」として暮らしていた。前卷で、「よそ者がその短剣を振るうときコロノス一族は滅びる」という巫女のお告げを基に、一帯に勢力を持つコロノス一族から追われる身になっている。

 今回の物語は、逃避行を続けるヒュラスが奴隷商人に捕まり、鉱山に送られるところから始まる。その鉱山がある島は、なんとコロノス一族が治める島だった。見つかれば殺されてしまう。しかもヒュラスはまだ知らないけれど、コロノス一族の一員でありながら、かつての親友のテラモンが儀式のために島にやってくることになった。

 島に来るのはテラモンだけではなくて、大巫女の娘で前卷でヒュラスと行動を共にしたピラもやってくる。主要な登場人物が再結集、ということで、多少わざとらしい展開だけれど許容範囲。新たな登場人物や、再登場した意外な人物が大事な役割を持っていたり、「火の女神」や「怒れる者たち」と呼ばれる神々が絡んできたり、絶体絶命もあり、物語は後半に向けて大いに盛り上がる。

 この「大いに盛り上がる」が、本書を読んでいた私の気持ちだ。実は前卷を読んだのは2年も前で(そのレビューの最後に「これからが楽しみだ」と書いたにも関わらず)、読んでもストーリーが分からないのじゃないか?という不安があったけれど、それは杞憂だった。もちろん細かく覚えてはいないのだけれど、スッと物語の世界に入ることができて、人物たちが生き生きと動き出すのが感じられた。

 とは言え、5巻シリーズなのであと3巻、今後はそう間を空けずに読みたい。

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神々と戦士たち1 青銅の短剣

書影

著 者:ミシェル・ペイヴァー 訳:中谷友紀子
出版社:あすなろ書房
出版日:2015年6月30日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 私はけっこう海外のファンタジーが好きで、トールキンCSルイスサトクリフDWジョーンズ...などなど、以前はよく読んでいたのだけれど、ここ3年ほどは、年に1~2冊ぐらいしか読んでいなかった。それで、できれば、新しい作家さんの新しいシリーズを、と思って、図書館で探していて本書を見つけた。

 著者のミシェル・ペイヴァーさんは、石器時代のヨーロッパを舞台にした「クロニクル 千古の闇」シリーズで高い評価を受け、2010年に最終巻の「決戦の時」でガーディアン児童文学賞を受賞。本書は、新たに始まった全5巻シリーズの1巻目。

 物語の時代は古代ギリシア。ただし、よく映画や物語の舞台になる、アテネやスパルタといった都市国家が興る2000年ぐらい前の「青銅器時代」。主人公はヒュラスという名の12歳の少年。もっと幼いころに妹と一緒に山で拾われた。以来「よそ者」として村の外でヤギの世話をして暮らしていた。

 ある日、青銅の鎧に身を固め、黒いマントをまとった戦士の一団がヒュラスたちを襲う。ヒュラスは運よく逃げ出したが、妹とはぐれてしまう。どうやら「よそ者」を全員殺そうとしているらしいが、なぜ自分たちが命を狙われるのかはさっぱり分からない。物語はこうして始まったヒュラスの逃避行を描く。

 他の登場人物を2人。族長の息子であるテラモンはヒュラスの親友。身分違いのため周囲には秘密だ。ケフティウという島の大巫女の娘であるピラは、本人に意思に反して結婚のためにここに連れてこられた。同じ年頃の子どもとして相通じる感性と、立場の違いから分かりあえない反発が、うまく物語の中で表現されている。

 その他、まだ名付けられていない「地を揺るがす者」や「野の生き物の母」といった神々への信仰や、「女神の使い」とされているイルカの描写など、本書には興味深いことが描き込まれている。全5巻。ということで、今回はひと山を越えただけ。物語は始まったばかり。これからが楽しみだ。

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