39.小路幸也(バンドワゴン)

オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2011年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第6弾。

 東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」とそこを営む堀田家を舞台としたミステリー&ホームドラマ。これまでと同じく4つの章があり、章の中で決着がつく小さな物語と、章をまたぐ大きな物語が同時並行で進む。

 例えば小さな物語は、「店の外のワゴンに何度か林檎が置かれていた」とか、「風体の穏やかでない輩が店の周りをウロウロしている」とか、「常連客の一人がストーカーされている」とか。深刻度に差はあるけれど「事件」が起きる。謎が解ければ一見落着。

 大きな物語の方は、30年前に亡くなった絵本童話作家の記念館の設立の話と、「伝説のロックンローラー」と呼ばれる我南人の曲の盗作事件。まぁこちらもうまい落としどころに落ちた感じ。

 前作のレビューで「都合のよさ」が興を削いでしまわない、ギリギリのライン、と書いたけれど、今回はそんなに「都合のよさ」を感じなかった。最終盤で「こりゃ力技だな」と思うことはあったけれど...

 改めて数えてみたら、本書までで堀田家の4年間を描いたことになる。シリーズ当初では小学校4年生だった研人くんは、中学1年生になった。ホームドラマの「無邪気+かわいい」担当だった彼が、本書では重要な役回で、何気ないセリフが「大きな物語」の伏線になっている。

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オール・マイ・ラビング

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2010年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第5弾。時代を遡って今は亡きサチおばあちゃんの若いころの物語だった、第4弾の「マイ・ブルー・ヘブン」から、現代へと戻って来た。

 東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」が舞台。そこを営む堀田家の人数が、巻を重ねるごとに増える。堀田家が関わることで登場人物も増える。本書巻頭の「登場人物相関図」には、実に30人以上の名前が載っている。

 その登場人物たちが、それぞれ主人公となった大小の物語が同時並行的に進む。小さな物語とは例えば、堀田家3姉弟の長男の紺の義弟の修平君が、「道ならぬ恋」をしているらしい、とか。修平君は以前の巻でちょっとだけ登場している。こんな具合で登場人物の増加によって、物語のバリエーションの拡大につながっている。

 大きな物語は、堀田家に伝わる「とてつもないお宝」の話と、伝説のロックンローラーと呼ばれる我南人の歌手生命に関わる話。私としてはこの2つともが、これまでのシリーズの中で一番を争うトピックだと思う。そういう意味で一山超えた気がした。

 「都合のよさ」が興を削いでしまわない、ギリギリのラインまで来ている気がする。ただ、このシリーズは基本的に「昭和のホームドラマ」の路線で、「都合のよさ」もその路線の内、と考えた方がいいのかもしれない。

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マイ・ブルー・ヘブン

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2009年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第4弾。今回は、これまでの3冊とは趣向を変えて、今は亡きサチおばあちゃんが主人公の番外編。時代は昭和20年。終戦の直後。サチさんがまだ18歳の時。なんとサチさんは、五条辻咲智子という名前で子爵家の一人娘だった。

 ある日咲智子は、両親から日本の未来に関わる重要な文書を託され、すぐに家を出るように言われる。両親は直後に何者かに捕らわれ、咲智子自身も拘束されそうになる。そこに居合わせたのが勘一。現在の「東京バンドワゴン」の店主だ。

 咲智子の両親を連れ去ったのも、咲智子を拘束しようとしたのもGHQらしい。託された文書を狙って、GHQだけでなく裏社会の組織からも、咲智子は追われる。勘一の父の草平が店主を務める「東京バンドワゴン」は、そんな咲智子を全面的に支援する...

 これは面白かった。前3作のどこかほのぼのしたホームドラマとは違い、サスペンス調のエンタテインメント作品になっている。本編の昔語りで登場する面々が活き活きと活躍する姿も、読者にとっては嬉しい。こんな出会いをした勘一とサチさんが、どれほど固い絆で結ばれていたことかと思う。

 サチさんが子爵家の一人娘だったことも驚きだけれど、勘一の青年時代にも目を瞠った。きっと勘一を見る目が変わると思う。「♪せまいながらもたのしいわがや」「♪We’re happy in My Blue Heaven」 ジャズの名曲「My Blue Heaven」も彩りを添える。

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スタンド・バイ・ミー

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2008年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」「シー・ラブズ・ユー」に続く、「東京バンドワゴン」シリーズの第3弾。

 シリーズ通して舞台となっているのが、東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」。登場人物もほぼ同じ、ただしだんだんと増えている。実は「東京バンドワゴン」を営む堀田家も、結婚したり子どもが生まれたりで人数が増え、今や12人と6匹という大家族になっている。

 表紙ウラに間取り図が載っていて、これを見ると仏間にも納戸にも人が暮らしていて、家のキャパシティを越えてしまっている。さらに人が増えそうな気配もあって、どうしたものか?ということが目下の問題(のひとつ)。どうにもならんでしょ?と思っていたが....なるほど。

 章ごとに小さな事件や大きな事件が起きる。例えば「年配のご婦人が、繰り返し本を3冊並べ替えて帰る」というような小さな事件、「(ロックンロールの大スターでもある)我南人の隠し子騒動が週刊誌にすっぱ抜かれる」という大きな事件。これを堀田家+周辺の仲間の総力を挙げて解決する。ちょっと「力技」もあるけれど、あまり人を傷付けることなく、何とかまあるく収まってホッとする。

 前作「シー・ラブズ・ユー」のレビューで、「東京バンドワゴン」は、女性たちによって支えられている、ということを書いたけれど、今回は、当主の勘一の孫の青の奥さん、すずみさんが魅せてくれた。京都の「いけず」のじいさん相手に「てやんでぇ」と啖呵を切って...若い女性の「てやんでぇ」に、じいさんたちといっしょに私ものけぞった。けど、カッコよかった。

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シー・ラブズ・ユー

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2007年5月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第2弾。舞台は前作と同じで、東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」。登場人物もほぼ同じで、章ごとに少しずつ新しい登場人物が加わっていく。

 「文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決」、これは今の店主の勘一の父が記したもので、「東京バンドワゴン」を営む堀田家の家訓で、古本屋の壁に墨文字で書かれている。家訓が実質的な意味を持つ時代ではないけれど、堀田家の面々はそれをできるだけ守ろうとしている。

 この家訓が関係するのか、堀田家には近隣の諸問題を引き寄せる何かがあるらしい。例えば、カフェに赤ちゃんが置き去りにされたり、持ち込まれた本に細工がされていたり、謎の紳士が自分で売った本を変装して買い戻しに来たり..。そして、勘一をはじめとする堀田家の面々は家訓を守って、こうした「事件」に首を突っ込んでいく。

 今回は様々な「過去」が明らかになった。例えば、店の常連のIT会社の社長の過去。それは思いのほか重いもので、社長の現在と未来まで変えてしまうものだった。勘一の息子の我南人の亡くなった妻、秋実についても語られた。それは「東京バンドワゴン」の過去、とも言えるエピソードだった。

 2冊を読んで、チラリと感じたのは、堀田家には良い嫁さんに恵まれていること。勘一の妻でこの物語の語り手のサチ、我南人の妻の秋実、我南人の息子の紺の妻の亜美、同じく我南人の息子の青の妻すずみ。「東京バンドワゴン」は、女性たちによって支えられている(男性陣もがんばってはいるけれど)。

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東京バンドワゴン

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2006年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 何人かの方から「面白いよ」と教えていただいていたのだけれど、タイミングが合わなかったのか、そのまま2~3年経ってしまった。今回めでたく読むことができた。面白かった。私が好きなタイプの物語だった。

 舞台はタイトルになっている「東京バンドワゴン」という名の下町の古本屋。明治18年創業というから歴史ある老舗だ。「バンドワゴン」というのは、楽隊を乗せた行列の先頭を行く車のこと。ずいぶん「ハイカラ」なネーミングだ。(もっとも「ハイカラ」という言葉は明治の後期にできたそうだから、言葉より先んじている)

 主要な登場人物が多い。「東京バンドワゴン」を営む堀田家には、店主の勘一を筆頭に4世代8人が暮らしている。そして語り手は、勘一の亡くなった妻のサチ。だから堀田家だけで9人いることになる。個性的な面々で、勘一は80歳を目前ながら90キロはある巨漢、その息子の我南人(がなと)は60歳にして金髪の「伝説のロックンローラー」。我南人には1女2男の子どもがいて、上の2人には小学生の子どもがいる。

 物語は、「東京バンドワゴン」の周辺で起きる「小さな謎」の巡るミステリー。例えば、勘一も他の誰も覚えがない百科事典が、店の棚に置かれていて、さらに夕方には忽然と消える。また、店の蔵が何者かに侵入されたり、小学生の子どもたちが付け回されたり、といった物騒な出来事も起きる。

 全体を通しての雰囲気は「昭和のホームドラマ」だ。頑固者の家長を中心にした大家族で、お互いを思いやりながらの暮らし。しかし個性のぶつかりは、時に(というか頻繁に)衝突を起こして、ドタバタとしたドラマを生む。巻末には「あの頃」のテレビドラマへの著者の言葉が記されている。

 「LOVEだねぇ」が口癖のロックンローラー我南人は、私には内田裕也さんを思わせる。特定のモデルはいない、ということになっているようだけれど。

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