ファイア・ドーム(上)(下)

書影

著 者:辻村深月
出版社:小学館
出版日:2026年6月5日 初版第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

久しぶりに、すごく読み応えのある本を読んだ。読んでいて、いたたまれなくなったり、涙があふれたり。次々と起こる出来事に感情を揺さぶられた。他の人にも薦めたくなった本。

舞台は、北陸地方にある人口200万人ほどのL県、その第二の都市と呼ばれる蒔戸市。物語の発端は25年前に遡る。百貨店の受付をしていた新沼紗英が、新聞記者を名乗る男に誘拐、殺害される事件が起きた。そして現在、紗英の甥にあたる小学4年生の戌井光汰郎が行方不明になる。最後に光汰郎に会ったのは、担任教師の佐村美冬だった。

本書には、主人公と呼べる一人の人物がいない。教師、新聞記者、事件の関係者など、何人もの人物を中心に物語が進んでいく。でも、描いているのは一つのことなのだと思う。

それは、大きな事件があれば、それに惹きつけられてしまう世間、私たちのありさまだ。そして、事件の渦中にある人を容易に傷つけ、その人生を変えてしまう。25年前も今回も、それは繰り返し起きている。

読んでいて、そんな無自覚な人の悪意にいたたまれなくなった。一方で、温かくも力強い言葉に涙があふれる場面もあった。一番憤って責め立てても不思議ではない人から発せられた「あんたは何も悪くない」という言葉が、強く心に残っている。

事件に惹きつけられ、その行方に一喜一憂する。そんな世間の一人である自分についても、考えさせられた。

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