書店ガール6 遅れて来た客

著 者:碧野圭
出版社:PHP研究所
出版日:2017年7月21日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 ビブリオマンシー(書物占い)という言葉を初めて知った本。

 「書店ガール」の第6巻。主人公は前作と同じで、取手の駅ナカ書店の店長の宮崎彩加と、大手出版社のライトノベル部門の責任者・編集者の小幡伸光。それぞれ前作では新しい立場や環境での奮闘を描いたけれど、本作はそれらが一段落した後の話。

 今回も二人に試練が待っていた。彩加の店は会社の方針で4ケ月後に閉めることになった。もちろん彩加には何の相談もなしに。オープンして1年半弱、アルバイトの店員のヤル気を引き出して、彼らの協力で店づくりがうまく行きだした矢先に。

 伸光の方は、ヒット作が生まれたが故の苦労。「鋼と銀の雨がふる」という作品がヒットし、なんとNHKでのアニメ化が決まる。それはとても幸運なことなのだけれど、アニメスタジオとの折衝など、ただでさえ忙しい編集者の伸光にさらなる負担がかかる。

 双方とも読んでいてなかなかつらい展開だった。特に彩加の方は「撤退戦」なので、この苦労を乗り越えたところに何かが待っているわけではない。正式な告知までは社外秘なので、誰にも相談できない。納品を減らすことを、一緒に働く仲間にさえ言えない。もっとも伸光の方も大変な事態に..。

 行き詰ってしまって「もうダメ」という時でも、誰か別の人が関わるだけで好転することがある。そんな出来事が救いになって、読後の後味は悪くない。前作から気になっていた彩加の恋バナもちょっと進む。シリーズの最初の方の主人公の西岡理子もカッコよく登場する。

 つらいことがあった時に役に立ちそうな言葉「世界はあなたのためにはない」
 受け止めるには胆力が要りそうだけれど。

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多数決は民主主義のルールか?

著 者:斎藤文男
出版社:花伝社
出版日:2021年4月20日 初版第1刷 7月10日 初版第2刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

最近「多数決なんて欠陥だらけじゃないか」と思っていたので、私の手元に来たのかな?と思う本。

「はじめに」の冒頭が本書のことを端的に言い表しているので引用する。

「多数決は民主主義のルール」とされています。「みんなが多数決できめたことだから」とも言われます。でも、ほんとにそうでしょうか。多数決なら、どんなことを、どのように決めてもよいのでしょうか。(中略)それを改めて考えてみようというのが、この本です。

著者がまず念頭に置いたのは、国会における多数決だ。特定秘密保護法(2013年)、安保関連法(2015年)、共謀罪法(2017年)、働き方改革関連法(2018年)、改正公選法(2018年)、カジノ実施法(2018年)、改正入管法(2018年)。これらの重要法案がすべて、与党による強行採決で可決・成立している。多数決なら「どんこと」を「どのように」決めてもよいのなら、これらの強行採決でもよいことになる。

「んなものいいわけがない。当たり前だろ」と私は思う。しかし私の「当たり前」を検証するために、本書は「社会契約論」のルソーと「市民政府論」のロックの思想から始め、ミル、シュンペーター、モンテスキューを引いて、立憲主義や人権保障、さらには直接民主主義の例としての国民投票などを議論の俎上に乗せる。正直に言って「こんなに手間がかかるのか」と思ったけれど、手間をかけた分、明確になったことも多い。

例えば「どんなことを」多数決で決めてはいけないのか?それは「人権に関わること」だ。多数派が少数派であるという理由で誰かの自由を奪ったり、生活を脅かすような不利益を強いたりすることはできない。これは大原則であって、日本国憲法では「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」とあるのだから。これに沿って考えると、性的少数者の権利や選択的夫婦別姓の問題は、この大原則を踏み倒しているように思える。

もうひとつ「自由民主主義」について。並列されることが多いけれど「自由主義」と「民主主義」は違う。民主主義を制度化したのが立法府と行政府。選挙という多数決で選ばれた国会議員からなるので「多数の支配」の原理がはたらく。自由主義を制度化したのが司法府。「多数の支配」を抑制して、個人の権利・自由を守る。故に三権の均衡がとても大事になる。

前半の学術的な検証に比べて、後半は現実の政治に直結する内容で、とても興味深くためになった。著者は市民立法運動の実践者でもあって、そうした経験も書かれていて心強いものを感じた。

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我が産声を聞きに

著 者:白石一文
出版社:講談社
出版日:2021年7月5日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 静かな、しかし決して元には戻らない家族の変化を描いた本。コロナ禍を設定に採り入れたのも特徴的。

 主人公は徳山名香子、47歳。英語学校の非常勤講師。10代の終わりに気胸を患って、その後も何度か軽い再発を繰り返している。コロナ禍で英語のレッスンはすべてオンラインに切り替えていた。一緒に住む夫の良治は大手電機メーカーの研究職で、彼も最近は週に1日か2日が在宅ワーク。名香子の肺を気遣って、外出も控えてレストランでの食事などは厳に慎んできた。

 ところが良治が「一緒に行って欲しいところががある」と、1週間先の予定が空いているかを聞いてきた。しかも用件は「当日になったら教えるよ」と言う。元々、どんなことでも打ち明け合うような夫婦ではなかった。むしろ適度な距離を保つことで、波風を立てずに20年間過ごしてきた。それでもこの良治の態度はおかしかった。

 物語はこの後、良治の病気の発覚から突然の別れ話と進む。名香子にはまったく予想外の展開で、気持ちがまったく追い付いていかない。

 これはなかなか厄介な物語だった。自分がどう感じているのか確かめ難い。実は、良治は今は別の女性と暮らしている。この物語の主な登場人物は、良治の他は、名香子、名香子の娘の真理恵と母の貴和子、良治と一緒に住む香月雛と、圧倒的に女性が多い。男性である私がもし誰かの気持ちが分かるとしたら良治なんだけれど、妻を置いて他の女のところに行ってしまう男に共感はできない。

 ところが何カ所か気になる言葉がある。例えばそれは真理恵の次の言葉。

 「おかあさんにかかると、いつだっておかあさんが正しい人になっちゃうんだもん

 読み飛ばしても話の展開には影響はないけれど、この言葉は私の胸を衝いて記憶に残った。「そういうことなのか」と、私は良治の心の一端に触れた気がする。世の多く(特に女性)の皆さんには一蹴されそうだけれど。

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池上彰の君と考える戦争のない未来

著 者:池上彰
出版社:理論社
出版日:2021年5月 初版 7月 第2刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

本のタイトルに著者名を冠してしまうのはどうかと思うけど、内容はよかった本。

池上彰さんが「戦争をなくすにはどうしたらいいだろうか?」と問いかける。それを考えるために、まずは過去に日本で世界で起きた数々の戦争について、コンパクトに要点を解説する。その戦争はどんな理由で始まったのか?どうやって終わったのか?その影響にはどんなものがあったのか?

日本が戦った戦争として、元寇、秀吉による朝鮮出兵、薩英戦争、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、太平洋戦争など。世界で起きた戦争として、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ソ連のアフガン侵攻、中東戦争、ユーゴの内戦、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争など。江戸時代以前の戦争を除いても約100年の間に10以上もあって「戦争しすぎでしょ」と思った。これ以外にも内戦や紛争と呼ばれるものを数えれば倍ぐらいになる。

その他に思ったことをいくつか。

1つめ。戦争が始まる理由がその犠牲と全く釣り合わないということ。例えば第一次世界大戦は、オーストリア=ハンガリー帝国の皇弟夫妻の殺害が発端だけど、世界中の国を巻き込んで1600万人以上が死亡することになる。2つめ。アメリカの戦争のやり方が「短慮」としか言いようがないこと。ベトナム戦争では、戦略のために隣国のカンボジア政府を転覆させてしまう。イラク戦争は、大量破壊兵器を持っているという誤った情報を元に始めてしまった。

3つめ。日本の戦争の始め方も相当ヤバイこと。満州事変は関東軍の自作自演の爆発事件を理由に「自衛」を目的に始まっている。日中戦争は日本軍への発砲が端緒になる。これも自作自演の疑いがある(諸説アリ)。4つめ。戦争の因果は繋がっていること(十字軍の昔から)。第一次世界大戦の戦後処理が中東戦争の原因になっているし、ソ連のアフガン侵攻からイスラム国の台頭まで、いくつもの戦争が数珠つなぎに繋がっている。

5つめ。歴史に「もしも」はないとは言え、回避できたかもしれないポイントが多くの戦争であること。その多くは過ちを犯した者にきちんと責任を取らせることと、正しい情報に耳を傾けること。満州事変の端緒となった爆発が、「自作自演」だという情報は当初から上がっていたし、軍紀違反でもあるのに首謀者は責任を問われることなく、陸軍の中で出世して後の戦争を主導している。

実は、本書は若い人に向けて書かれたものなのだけれど、40歳でも50歳でももっと上でも、読めばためになると思う。あくまで「池上彰さんの見方」であることは心得て置くとしても、過去から学ぶことは多い。「ではどうすればいいのか?」にも触れている。恐ろしいのは過去の戦争の経緯に、現在の世界情勢と符号することが多々あることだ。「トゥキディデスの罠」は今の米中関係にもあてはまる。

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テスカトリポカ

著 者:佐藤究
出版社:角川書店
出版日:2021年2月16日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 これが大衆文学の賞を受賞したわけで、だとすると「大衆」ってこういうのが好きな人が多いの?と思った本。

 2021年上半期の直木賞、および今年の山本周五郎賞受賞作。

 臓器売買の犯罪グループを描いたノワール(暗黒)小説。物語の舞台はメキシコから始まって川崎→メキシコ→ジャカルタ→川崎と移り変わっていく。多くの人物のエピソードを積み重ねてそれらが交錯して、一つの凶悪な犯罪の物語を構成していく。

 その多くの人物というのが、メキシコの麻薬カルテルのボスだとか、臓器を違法に摘出する闇医師だとか、態度を注意されて「ごちゃごちゃうるさい奴」を頭を叩きつけて殺してしまうカメラマンだとか、とにかく尋常ではない「悪人」ばかりがゾロゾロと登場する。

 その中にコシモという名の少年がいて、彼も13歳の時に父親を頭を天井に叩きつけて殺すという、とんでもない経歴がある。しかしこれには、父親がコシモを牛刀で刺し殺そうとしていた、という訳があった。また彼はネグレクトを受け学校にも行っていない。なぜか屈強な体を得た無知・純真な心の持ち主。この少年が物語の軸の一つになって、その成長で時間の経過が分かる。

 読んでいる間中ずっと眉をひそめていた。スリリングで飽きることなく最後まで読めるのだけど、残虐だったり倫理に反していたりするシーンが重ねられて「こんなのアリなのか?」と思った。フィクションなのだから、悪いことだって殺人だって起きてもいいのだけれど、あまり続くので露悪趣味のように感じた。ノワール小説とはそういうものなのかもしれないけれど。

 そうそう。タイトルの「テスカトリポカ」はアステカ神話の神で、本書の随所にもアステカ文明や神話の記述が登場する。私が倫理に反すると思ったものの中には、アステカの儀式につながるものもある。そこは現代日本の価値観で判断すべきでないのかもしれない。でもねぇ...。

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白鳥とコウモリ

著 者:東野圭吾
出版社:幻冬舎
出版日:2021年4月5日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 東野版「罪と罰」と銘打ってある意味が読み終わってよく分かった本。

 物語の発端は殺人事件の被害者の発見。竹芝桟橋近くの路上で違法駐車されていた車の後部座席から、ナイフで腹を刺された男性の遺体が発見された。遺体は、残された運転免許証から55歳の弁護士、白石健介さんと判明した。警察の捜査線上に倉木達郎と言う名の容疑者が浮かんだ。その倉木が刑事に対して「すべて私がやりました」と自白した。ここで520ページの作品の80ページ。事件の解決が早すぎる。

 主な主人公は3人。一人目は刑事の五代務。38歳、警視庁捜査一課の捜査員。この殺人事件の捜査を担当し、容疑者の特定に貢献、その自白を直接聞いた。二人目は倉木和真。30代。大手広告代理店に勤める。自白した容疑者の倉木達郎の息子だ。三人目は白石美令。会員制の総合医療機関に勤めている。事件の被害者の白石健介の娘だ。

 倉木達郎の供述は詳細で矛盾もない。犯人しか知りえない「秘密の暴露」も含まれる。裁判では検察側も弁護側も事実を争う予定はない。しかしその「事実」に違和感を感じる者がいた。突然に父親が殺人事件の犯人になったのだから、和真が「父がそんなことをするはずが..」と思うのはともかく、美令も「父がそんなことをするはずが..」と思う。そして、それぞれが事件について調べていくと..という話。

 重厚な物語だった。30年以上も前の時効となった事件が密接に関係する。「立場」と人間的な繋がりからくる「心情」の相違。帯に「新たなる最高傑作」とあるけれど、誇張ではないと思う。そして、ネタバレになるから詳しくは言わないけれど、なんとも切ない物語だった。主人公の3人の手によって、真相は明らかになるのだけれど、「これは明らかにしてよかったのか?」と思ってしまう。

 私が最初に読んだ著者の作品「容疑者Xの献身」を思い出した。

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星落ちて、なお

著 者:澤田瞳子
出版社:文藝春秋
出版日:2021年5月15日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

「普通」を求めても得られない、主人公の生き方が哀しくも頼もしかった本。

2021年上半期の直木賞受賞作。

明治、大正、昭和の時代を生きた女絵師の一代記。主人公の名前はとよ。天才絵師の河鍋暁斎の娘。その暁斎が59歳で亡くなった葬儀の後から、物語は始まる。明治22年、とよが22歳の時。

父の暁斎は師匠から「画鬼」とあだ名された。歌川国芳を最初の師として、狩野家で厳しい修行を積み、やまと絵から漢画、墨絵まで様々な画風を自在に操った。しかし「画鬼」たる所以は「絵のことしか考えぬ男」だったからだ。生家が火事だと聞けば画帖を持って駆けていって、火消しではなくて写生をする。自分の臨終の床で、嘔吐する自分とそれを見て仰天する医師を描いた。

とよは、そんな父のもとで5歳の時から稽古を始めた。とよにとって暁斎は父であるより師だった。自分が大人になり父を亡くして振り返ればそう感じた。実は多くいる兄弟姉妹のうち、兄の周三郎ととよの二人だけが、絵師の道を継いだ。兄の周三郎は父の絵だけでなく、性格も色濃く受け継いだらしい。父の葬儀を中座して家に帰って、注文された絵を描いていた。

物語は、ここを始点にして大正13年までの35年間の時々を描く。その間にとよの親しい人たちが一人また一人といなくなっていく。衝突は絶えなかったが、同じ道に進んだ周三郎も逝ってしまう。

淡々とした筆致に、筋の通ったとよの生き方を感じた。読んでいる最中は、もっと劇的なドラマがあってもいいんじゃないかと思った。しかし、とよも暁斎も周三郎も実在の人物で、それを考えれば十分に掘り下げた質のいいドラマに仕上がっている。

著者の作品を読むのはこれが初めて。調べると様々な賞を受賞されている。「若冲」という作品もある。読んでみようと思う。

最後に。「自分の如き画鬼の娘は結局、まともな相手と家族ではいられぬのだ」というとよの心の内の言葉が哀しい。

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エレジーは流れない

著 者:三浦しをん
出版社:双葉社
出版日:2021年4月25日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 アホ男子高校生の暮らしは楽しい。でも彼らも一生懸命生きているのだ、と思った本。

 主人公は穂積怜。餅湯温泉駅前商店街の土産物屋で、母の寿絵と暮らす男子高校生。餅湯温泉は、関東近県から客がやってくる一大リゾート地。餅湯温泉駅には新幹線の駅もある。とはいえ、団体旅行も減って久しい昨今、ホテルや旅館は経営が厳しく、それは土産物屋も同様で、怜が生まれた時からこの町は半分寝たような状態だ。

 物語は怜の日常から始まる。朝起きて、母親としょうもない口喧嘩をして、学校に行って、身が入らない授業を受けて、昼休みには子どものころから一緒に育った友達と屋上で弁当を食べる。あっと言う間に食べ終わって、誰かが「腹へった..」とか言う。..平和だ。

 と思ってたら「あれ?」と思うことが起きる。怜が寿絵と暮らす家とは違う家に帰って行く。どうやら毎月第三週はそこで暮らすらしい。50畳はあろうかというリビングダイニングがある豪邸で、商店街の店舗兼住居の家とは全く違う。おまけにそこには伊都子という名前の女性が居て、怜は伊都子のことを「お母さん」と呼んでいる。なんと怜には母親が二人いるらしい..。

 男子高校生の学園生活、お店や旅館の子どもが多い同級生たちの支えあい、子どものころから知っている商店街の大人たちとの関係、サスペンス調の冒険などなどが描かれる。もちろん、怜に母親が二人いる事情も明らかになるし、それに絡んだ事件も起きる。すべてが著者らしいユーモアと人情にくるまれている。

 笑う場面が多いのだけれど、なかでも特に声を出して笑ってしまった場面がある。友人の一人が右手の中指と人差し指を骨折する。その理由が...ぜひ読んで欲しい。

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「科学的」は武器になる

著 者:早野龍五
出版社:新潮社
出版日:2021年2月25日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 「科学者」と「社会」の関係について、新たな気付きがあった本。

 まず著者の経歴から。1952年生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了、大学院に残って教授に、2001年から1年間CERN(応酬原子核研究機構)の客員教授として「反物質」の研究を率いている。つまりは世界的に認められた科学者だということ。

 ここからがちょっと興味深い。2016年に音楽教育の「スズキ・メソード」の会長、2017年には株式会社ほぼ日に入社。もう一つ特筆すると2011年の東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故の際には、Twitterでの情報発信が注目され、内部被ばくの測定に関してなくてはならない役割を担っている。

 本書は「「科学的」は武器になる」というタイトルだけれど、内容は、著者が子どものころから始めて、上に書いた経歴を追う形で自身の歩んだ道程を振り返ったものだ。「科学的」がどうして武器になるのか?は直接的には書かれていない。しかし著者の人生を通して、「科学的である」ことの重要さと強靭さが伝わってくる。

 著者は「社会の中に科学者がいる」とはどういうことなのか?を繰り返し述べる。科学者はそれぞれの研究分野で成果を上げることだけでなく、社会の問題について「科学的な考え方を軸に判断する」ことを提供することでも貢献できる。流言や陰謀論が果てしなく飛び交う現在には、とても大切な貢献だ。福島の内部被ばくの測定で著者が担った役割を知れば、そのことがよく分かる。このことは新たな気付きだった。

 よく覚えておこうと思ったことを2つ。

 科学は一般的なイメージと違って、間違えるものです。だけど、それが本当に間違っていたならば、いずれ「間違っていた」と分かるシステムなんです。

 僕が原発事故の時も、今回のコロナ禍においても一貫して気を付けていることは、「グラフによる未来予測をしない」ということです。

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イエロー・サブマリン

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2020年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 幻の作家の話で家族が盛り上がるのが、微笑ましく羨ましく感じた本。

 「東京バンドワゴン」シリーズの第15弾。東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」を営む、大家族の堀田家の1年を描く。前作「アンド・アイ・ラブ・ハー」の続き。(実は16弾の「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」を先に読んでしまった)

 本書のシリーズは毎回、ミステリーと人情話が散りばめられてエピソードが重ねられる。今回は後半に少しだけ荒っぽいことがあったけれど、全般的に落ち着いた人情話だった。シリーズ通してその傾向はあるのだけれど、意外な人の縁がつながっていく。

 第1章にあたる「夏」の章で、東京バンドワゴンにやってきたお客さん。毎日来る近所の神社の神主さん以外に3人。一人は近所の建設会社の社長。解体予定の建物に血まみれの本が落ちていたとか。二人目は以前は古本屋をやっていたという男性。段ボール箱で3箱の持ち込み。三人目は文学部に通う女子大学生。幻の作家とも言っていい画家と小説家の希少な本を探している。

 いかにも剣呑な血まみれの本のことはともかく、なにげない他の2人の古書店の客も、この後の物語につながって、けっこう大事な役割を一人は担っている。この人は、またいつか別の物語にも登場してくるのだろうなと、それを期待させる気になる(というか、このシリーズにピッタリな)人だった。

 かんなちゃんがスゴイ。研人くんが結婚した。

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