人間になれない子どもたち

著 者:清川輝元
出版社:枻出版社
出版日:2003年4月30日発行 2003年11月30日第4刷
評 価:☆☆(説明)

 本書の主張はこうである。
 1960年~70年代以降、産業構造の変化や核家族化などによって、子どもたちが成長するための場が急速になくなってしまった。物理的な遊び場もそうだし、大家族や地域社会などの環境もそうだ。そこに、1980年代以降、テレビゲーム、パソコンなどのメディアが、子どもたちから時間までも奪っている。この国の未来が心配だ。
 そして、こう提言する。
 「教育の原点は家庭」と、声高にスローガンを掲げても、もはや家庭には教育をする力がないのだから、意識して子どもが育つ場を作ろう。母親を含めて子どもがドロップインできる(溜まれる)場を作ろう。そして時間を作るためにテレビを消そう。
 こうも言う。「メディアを一方的に敵視、排除するのではなく、メディアに振り回されず、メディアをコントロールできる力を子どもたちに育もう。」

 ゲーム脳の研究を科学的と評する部分以外は、まじめな良い主張だと思う。しかし、子どもとメディアについて、混乱を招きかねない部分もある。
 2,3才までのテレビの繰り返し視聴は、脳の発達への悪影響が懸念される症例が報告されている。因果関係はまだ定かではないが、注意が必要だ。しかし、それ以上の子どもや大人にとっては、テレビを見ていて、その他の時間がないというのは困ったことだが、それはメディアの存在が悪いのではない。
 こうした区別をはっきりしないと、「ゲーム脳」の話とくっついて、「1分ゲームをすれば、1分分脳が壊れる」という、ヒステリックな主張が出てくるのだと思う。

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