ゲド戦記外伝

著 者:ル・グウィン 訳:清水真砂子
出版社:岩波書店
出版日:2004年5月27日第1刷 2005年12月26日第4刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 これまでのゲド戦記で語られた物語の300年前から同時代の5つの短い物語と、アースシー世界の解説が収められている。
 著者が構築した世界観を知るには良い作品集だ。ロークの学院の起こりや、ゲド戦記の登場人物たちに厚みを持たせるエピソードなどが分かる。

 中でも重要と思われるのが、最後に収められた「トンボ」という100ページの中編。これは、第4巻「帰還」の数年後、第5巻「アースシーの風」よりは前の物語で、第5巻で十分な説明もなく登場するアイリアンの話だ。この中編のなかで、大賢人がいなくなってしまったロークの学院は危機に瀕し、アイリアンがこれを克服する。4巻と5巻を橋渡しする物語だ。
 原書では、この外伝は第5巻の前に出版されているので、順番としては順当だ。日本では逆になっているのだが、岩波書店はどういうつもりでそうしたのだろう。5巻まで読んだ読者には必読の書だと思う。

 ところで、著者は4巻「帰還」から10年以上の歳月を空けて、この「外伝」を出している。前書きに「ちょっと覗いてみると、私が見ていなかった間に、アースシーではいろいろなことが起きていた」と書いている。作家らしい気の利いた物の言い様だとは思うが、私はワザとらしさを感じて好かない。

そうそう、「トンボ」に、「外より内はずっと大きい」という言葉がでてくる。この言葉は、ルイスのナルニア国物語7巻「さいごの戦い」にも出てくる。もしかしたら、欧米では慣用句なのかも。

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