地下鉄(メトロ)に乗って 特別版

著 者:浅田次郎
出版社:徳間書店
出版日:2006年7月31日第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 映画化され、そのテレビCMを見て面白そうだと思ったのを思い出して、読んでみた。
 予想にたがわず、面白かった。著者の体験や、父親の話がベースになっているそうだが、独特の世界が流れていて楽しめた。

タイムスリップものである。現在は1994年。主人公は大会社の社長の二男だが、訳あって下着会社の営業をやっている。長男は子供のころに自殺。弟の三男が父親の会社で副社長をしている。
 そして、主人公は、地下鉄の出口、ホーム、電車の中などをタイムトンネルにして、兄の自殺の日、戦後の闇市、戦時中の満州、父親の出征の日などにタイムスリップし、様々な真実を知る。

 よくあるタイムスリップものとしては、不都合な現在を変えるために、過去へ行ってその時点の出来事を修正する、というのがある。しかし、本書では少し違う。主人公は無力だ。兄の自殺を止めようとするのだが、その運命を変えることはできなかった。もし、できていたら、今の主人公の家族の有りようは、ずいぶん変わっていただろうに。

 そして、ストーリーは最後に思いもよらない方へ急展開する。唯一人すべてを知る主人公には辛い結末かもしれない。

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