ゴールデンスランバー

書影

著 者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2007年11月30日発行
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 帯に「伊坂的娯楽小説突抜頂点」とある。宣伝文句に珍しくウソはなく、最新刊の本書は伊坂作品の(現時点での)頂点を極めたと思う。そのくらい他を圧倒して面白い。もちろん他の作品が面白くないわけではない。しかし、スピード感、良い意味で読者の予想を裏切るストーリー展開、巧妙な伏線と、著者渾身の作品を受け取った感じがする。

 ストーリーは、首相の暗殺事件に始まる。仙台でのパレードの最中に、ラジコンのヘリコプターを使った爆発で現職の首相が暗殺されてしまう。主人公は、その犯人に仕立て上げられてしまった男、青柳雅春。彼を取り巻く人々に、陰に日向に支援を受けて、警察の追及から逃げる、逃げる、逃げる。逃亡の記録がスリリングに、時にユーモアを交えてつづられる。
 五部からなる本作の、第四部が本編とも言えるこの逃亡記だが、第三部までに事件のあらましが紹介されてしまっているので、読者はある程度何か起こるかを知っていて読むことになる。正直言って、第四部読み始めのころは、こういった構成を恨んだ。何が起こるか分かっていて、それを確認するのでは何が面白いのかと。
 しかし、第四部を読み進めていてふと気が付いた。「もう夜中の2時だ。明日も会社に行かなければならないのに。」そのくらい引き込まれていたわけで、自分でも意外だった。

 構成の話で言えば、第三部はノンフィクションライターによる事件から20年後の調査書で、事件の後日談が紹介されている。面白い構成だとは思うが、伊坂作品の中には、時制が前後する作品が時々あるので、特に気にしていなかった。
 しかし、読了後にキアさんのブログ「活字中毒日記」の紹介を読んで、「もう一度第三部を読み返すと…」とあったので、私も読み返してみた。そうしたら、また別の発見があった。(これに気付いてすごく満足した。)著者は、この順番であれば読者が気が付かないかも、と知っていてこういう構成にしたのだろう。一本取られた。そして、キアさんに感謝。
 青柳雅春のその後の人生がどうなったか、読み終わってそれがわからない方は、もう1度、第三部を読むことをおススメする。

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10つのコメントが “ゴールデンスランバー”にありました

  1. キア

    こんにちは。
    トラックバックありがとうございます!
    個人的に一番気に入ったセリフが第三部への伏線だったことがうれしいです。

  2. たかこの記憶領域

    ゴールデンスランバー / 伊坂幸太郎

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    えっ、えっ、えっ?真相は???巨大な秘密結社は?国家の陰謀は?と、読み終わった直後は思ったけれど、まぁ許せる。
    真理をあばいていくもので…….

  3. たかこ

    確かに面白かったですね!私は10月に読んでました。
    で、キアさんの「もう一度第三部を読み返すと…」というのも拝見しました。
    私ももう一度読み直してみようかな、多分気が付いてないような気がします。

  4. YO-SHI

    たかこさん、コメントありがとうございます。

    面白かったですね。今年読んだ本1位に迷いませんでした。
    私のレビューの最後にあるように、「青柳雅春のその後の人生」が
    本書のどこかで明らかにされています。まだ、お気づきでなければ
    読み返されるのも良いかと思います。

    ただ、これが分かって私はとてもうれしかったのですが、
    そうでない人もいて、教えてって言うので教えたら「ふ~ん、それで?」
    って言われてしまいました...。
     

  5. 国内航空券【チケットカフェ】

    ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎著

    俺はどうなってしまった? 一体何が起こっている? 首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、国家的陰謀から逃げ切れるのか? 二年ぶり千枚の書き下ろし大作。
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    仙台を舞台に、言わずと知れたケネディ暗殺事件をモチーフに、国家が一個人を首相暗殺犯に仕立てあげるこ…

  6. ぐーたら堂

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    国家規模の「権力」によって首相暗殺の犯人に仕立て上げられた平凡な男の逃走劇、というまるで映画のようにスケールの大きなエンター……

  7. おでこのめがねで読書レビュー

    ゴールデンスランバー (伊坂幸太郎)

    1963年11月22日。テキサス州ダラスにて、第35代アメリカ合衆国大統領のジョン・F・ケネディはオープンカーで市内パレードを行っていた。町中をゆっくりと走る車に乗って、笑顔を振りまく大統領の姿を、アマチュアカメラマンのザプルーダー氏が持つサイレント8mmフィルム……

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