鴨川ホルモー

著 者:万城目学
出版社:産業編集センター
出版日:2006年4月20日第1刷 2007年4月30日第11刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 2007年の本屋大賞の第6位。本作でボイルドエッグズ新人賞を受賞して世に出た著者のデビュー作でもある。本屋大賞での受賞を知った時から読んでみたいと思っていたが、タイミングが合わず、今になってしまった。

 舞台は京都の街、登場人物の殆どは大学生、そのまた大部分は京都大学の学生だ。主人公は、サークル勧誘のコンパで知り合った女子に一目惚れした、男子京大生の安倍。彼が入ったそのサークルの名は「京都大学青竜会」。
 普通であれば、こんな怪しげなサークルに入ったりはしないが、彼は、一目惚れした理想の「鼻」の持ち主である早良京子の顔、いや鼻を見たいがために、サークルの例会に顔を出してしまう。

 サークルの名の「青竜」は、北の「玄武」、西の「白虎」、南の「朱雀」に並ぶ東の「青竜」がその名の由来。ご存じの方もおられようが、これらはキトラ古墳の壁画に描かれた四神獣であり、陰陽道に通じる。そして、京都大学は京都の街の東に位置する。ということは、残りの3神獣に対応するグループが存在する、ということだ。
 さて「ホルモー」とは何であるのか、についてはネタバレになってしまうので詳しくは伏せる、青竜会を含む4つのグループで行われるものとだけしておこう。

 「ホルモー」が何であるかが明らかになるまでの前半1/3は、ストーリーがどこへ向かうのか分からないこともあり、平板な感じがする、ちょっとしたユーモアを交えた甘酸っぱい青春小説のようだ。
 しかし、まさかそんな!と言う感じの「ホルモー」の内容が明らかになる中盤以降、スピード感が増して一気に読めるようになる。各賞を受賞したのはダテじゃないのだ。
 まぁ、単なるウケ狙いかと思うところや、強引な展開もある。京都や京大生の内輪話っぽいところもあって、そういうのがイヤな人もいるだろうなぁと思う。しかし、ウケ狙いも結構、これがハマる人もいる。私はどちらかと言えばそのクチだ。
 そして、読み終わった時に改めて気が付く。これは、やっぱり甘酸っぱい青春小説だったのだ。ドシャブリの雨の中「私が好きなのは、あなたなのよ!」と告白する式の図がお好みの方は、是非一読を。笑いと感動をダブルで味わえます。

 多くの人が既に指摘していることではあるが、森見登美彦氏の作品とかぶりまくる。どちらが良いかは、もはや好き嫌いの問題だと思う。敢えて言えば、森見氏の方がキャラクターが濃いか。
 余談ではあるが、森見氏のブログ「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」のしばらく前の記事によると、森見氏は氏のお母様から「鹿男あをによし、観てるよ」というメールを受け取ったそうである。「鹿男~」は言わずと知れた、テレビドラマ化された万城目氏のヒット作だ。森見母は最高だ。

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18つのコメントが “鴨川ホルモー”にありました

  1. YO-SHI

    ゆんさん、コメントありがとうございます。

    お祝いの言葉もありがとうございます。ビーケーワンのオススメ書評のことですね。
    本人より先に知ってお知らせくださるなんて、感謝です。

    ビーケーワンからは何の連絡もなく、ポイントも増えてないんですが..。
    3000ポイントプレゼントって、最初だけなのかな?

    ↑↑
    連絡ありました。(12時30分ごろ)

  2. ゆん

    オススメ書評のことでした。謎のコメントすみません><
    何度でも選ばれたりポイントもらえたりするんですね!
    3000って結構大きいですよね。
    燃えてきました(笑)

  3. ミチの雑記帳

    「鴨川ホルモー」 「ホルモー六景」 万城目学

    {/book/}「鴨川ホルモー」 万城目学
    第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。
    表紙を見ると、ビートルズの「アビィ・ロード」を模したようなデザイン。
    イラストの奥の方に見えるのは八坂神社。となるとこれは四条通りですね。
    「鴨川」とタイトルにあるくらいですから京都好きにはちょっとたまらない京都満載な作品なのではないかな〜ってワクワクしながら読み始めました。
    一番の疑問は“ホルモー”って何?ってこと。
    これがなかなか明かされずにじれったいのですが、読み易い文章とそこはかとない可笑しさでホ…

  4. ミチ

    はじめまして~♪
    TB&コメントをありがとうございました!
    私も早く読んでみたかったのにもかかわらず、図書館での順番待ちが長くて今頃になってしまいました。
    京都という町はこういう妄想(?)にうってつけの町でもありますね~。
    京都は割とよく知っている町なので出てくる地名なんかもとても懐かしく読みました。
    「ホルモー六景」も面白かったですよ!

  5. YO-SHI

    ミチさん、コメントありがとうございました。

    私は京都に住んでいたことがありますが、何かの拍子に1200年前にも、ここに人が住んでいたことを意識することがありました。
    例えば、鴨川の流れを見ていた時に、1200年前にも(もっと前にも?)この流れを誰かが見ていたのかなぁ、とか。

    「ホルモー六景」もゼッタイ読みます!

  6. なぐぉん

    こんにちは。初めまして。
    TBさせていただきました。
    確かにウケ狙い的なところも多々あり、アイデア勝ちという部分もあるようにも思いました。
    でも、確かに王道の青春小説ですね。
    ちょっと不思議な雰囲気に僕はとてもはまりました。

  7. YO=SHI

    なぐぉんさん、コメントありがとうございました。

    そう、思い返せば返すほど、青春の香りがするんです。
    ドシャ降りの中の「わ、わたしが好きなのはあ、安倍-お前なの!」
    なんてセリフ、青春じゃなきゃ出てきませんよね。

  8. dekochin

    初めまして♪
    この度はTB&コメントを頂きありがとうございました。
    もしかすると茶巾絞りのような小鬼達が
    その辺にうようよしているのでは?と気がかりな今日この頃です。
    「ホルモー六景」図書館に予約中であります。

  9. YO-SHI

    dekochinさん、コメントありがとうございます。

    「ホルモー六景」私も読みたいです。
    ただ、積読状態の本が5冊ほどあり、これの後にするか、割り込ませるか思案中です。

  10. lazyMiki

    こんにちは!
    私も、本書と「ホルモー六景」楽しみました。
    映画化もされるということですが、「オニ」はどんなふうに映像化させるのか、楽しみなようなブキミなような。

    ずっと前から京都が好きで、ここのところは毎年出かけています。あの街で学生時代を過ごされたとは羨ましい。
    楽しい物語も好きですが、森見さんなら「きつねのはなし」とか、梨木香歩さんの「家守綺譚」などの舞台になる京都の不思議な雰囲気も大好きです。

  11. ここから

    鴨川ホルモー/万城目学

    あ~、もいっかい「ホルモー六景」読み直したい。
    本来、「六景」の方が続編なのに、そちらから入ってしまった私――といっても、それで全然問題なく、「六景」は「六景」で楽しめたのですが。
        「ホルモー六景」感想はコチラ。鴨川ホルモー/万城目学(産業編集センター)
    天下に名立たる京都大学という学舎には、作家さんをして物語の登場人物として描きたくてたまらない気分にさせる珍妙な大学生が多い・・・の、かしら?
    糺の森ホルモー、なんて読むと、つい「タヌキの親子も観戦か?!」と。
    (おそら…

  12. Yashi-An Blog

    鴨川ホルモー/万城目 学

    タイトルも、表紙も、怪しい。
    前半のぐだぐだ感で挫折しかけたが、
    後半、怒濤の展開でラストまで読み進みました。
    終わってみれば、魅力的なキャラだし、
    甘酸っぱい青春ストーリーで、
    好みのストーリーでした。
    映画にも期待。…

  13. そうるF

    TB&コメントのお返しです。ありがとうございました。

    告白の部分は、かなりのネタバレですね(^^)
    森見さんの作品共々、無性に京都に行きたくなる作品です。

  14. YO-SHI

    lazyMikiさん、コメントありがとうございます。

    無くしてからその良さが分かる、ということは良くありますが、私の場合は住んでいる時から京都の街は好きでした。それでも、あんなところやこんなところも行っとけばよかった、と後悔しきりです。

    それから「家守綺譚」という本は、知りませんでした。
    Amazonで調べましたが、面白そうですね。
    教えていただいてありがとうございます。読んでみます。

    —-

    そうるFさん、コメントありがとうございました。

    ネタバレですね。確かに。反省してます。..
    ドラマやアニメのロケ地や舞台を巡るツアーがあるそうですが、万城目作品や森見作品の舞台を巡る旅行なんて、面白そうですね。

  15. 風竜胆の書評

    鴨川ホルモー

     大体学生と言うものは、昔からアホなことが大好きだった。この「鴨川ホルモー」(万城目学:角川書店)に出てくる「ホルモー」などはその極みと言えよう。
     「ホルモー」 …

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