魔法の館にやとわれて 大魔法使いクレストマンシー

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:田中薫子
出版社:徳間書店
出版日:2009年5月31日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 久しぶりのダイアナ・ウィン・ジョーンズ、しかもクレストマンシーシリーズの最新刊。シリーズものだから世界観は変わらない。並行世界が12の系列に別れ、そのそれぞれに原則として9つの異世界がある。この世界観がストーリーの源となっているのか、今回もユーモアたっぷりの楽しい作品だった。

 「クレストマンシー」というのは、全部の世界について魔法の使われ方を監視する役職の名前だ。今回の準主人公のクリストファーは、次のクレストマンシーになることが決まっている魔法使い、でもまだ修行中の10代半ばの少年だ。そして、主人公のコンラッドは12歳。2人とも、お金持ちの館に従僕として働きに来た、そしてそれぞれここへは隠された目的があって来ている。
 物語は、高慢な主人一家や執事たちにこき使われながら、従僕として過ごす2人の生活がドタバタと描かれている。いつものように大人たちはみんな1クセも2クセもあるし、若干類型的とは言えユーモアたっぷりのキャラクターたちとの絡みも楽しい。

今回の作品には、終盤にちょっとした大団円は用意されてはいるが、大きな見せ場はない。でも、心配はない「ギリギリでセーフ」を繰り返す2人の少年の行動による起伏と、徐々に新しいことが分かる期待感で充分に読ませるからだ。
 この作品はきっと、後のクレストマンシーであるクリストファー・チャントの人物造型のために、その生い立ちとして少年時代を描きたかったものなのだ。さらに幼いころを描いた「クリストファー魔法の旅」を初めとするシリーズを何作か読んでおいた方が楽しめると思う。いや「クリストファー魔法の旅」を読んだ人には是非読んでもらいたい。彼の成長を楽しめるはずだから。

 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

3つのコメントが “魔法の館にやとわれて 大魔法使いクレストマンシー”にありました

  1. Ciel Bleu

    「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

     [amazon] イギリス・アルプスの山中にあるストチェスターの町に住むコンラ…

  2. 四季

    YO-SHIさん、おはようございます。
    これを読んで、クリストファーのほかの話がものすごく
    読み返したくなったのですが、未だに果たせてません…
    既にタイミングを逃してしまった気もかなり。
    でもシリーズが完結したときに(完結するのか知りませんが)
    時系列順に読み直してみるというのも楽しそうですよね♪
    シリーズ続編「キャットと魔法の卵」ももうすぐ出るようですし~。
    8月は創元推理文庫から「魔法泥棒」も出ますし
    作者さんも訳者さんもがんばってるようですね。

    本当は「リリス」にもコメントしたかったんですが
    読んだのがあまり前すぎて、漠然とした映像でしか残ってなくて…
    また読まねばー。

  3. YO-SHI

    四季さん、コメントありがとうございます。

    そうそう、読み返したくなりますね。
    私は、特にミリーのことが気になりました。
    あまりにおぼろな記憶しかないのですが、
    クリストファーの他の話にも出てきたような
    気がするので。

    創元推理文庫からも出るのですね。
    読みたい本が増えて、忙しくなりそうです。
     

YO-SHI へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です