我らの罪を許したまえ

書影

著 者:ロマン・サルドゥ 訳:山口羊子
出版社:エンジン・ルーム/河出書房新社
出版日:2010年5月30日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 発行元のエンジン・ルームさまから献本いただきました。感謝。

 13世紀の終わりごろのイタリア、フランスを舞台とした歴史ミステリー。13世紀のヨーロッパは中世のただ中にあり、キリスト教信仰の全盛期で教会が強大な力を持っていた。本書でも、異端審問や十字軍の遠征などが、物語のキーファクターとなっている。

 物語は3つの話が並行して進む。1つ目は、南フランスの司教区で、何者かに惨殺された司教の事件の真相を調べるために、司教の遺体と共にパリへ向かう助任司祭の話。2つ目は、その司教区の近くの「忘れられた村」に布教活動に赴く司祭の話。3つ目は、ローマに現れた十字軍の英雄でもある高名な騎士による、子息の助命嘆願の話。
 1つ目と2つ目の話は最初にこそ接点があるが、その後は全く別々の話になる。3つ目に至っては舞台がイタリアで、南フランスの他の2つの話との関連は全く見出せない。3つに共通するのは、どれもがキリスト教の支配組織としての教会に絡んだ話であることだ。そしてもちろん、すべての話は1つの話1つの陰謀に収れんしていく。

 物語が収れんしていく見事さと、暗部がチラチラと見え隠れする教会内の確執の描写などが醸し出す「中世感」が本書の持ち味。全体的には暗いトーンの話なのだが、要所にはサスペンス風のエピソードもあって飽きない工夫はされている。ただ、好き嫌いの評価で恐縮なのだが、私はこの終わり方は好きではない。表紙も奇怪な絵で、見れば見るほど心が乱れる。

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