きみはポラリス

書影

著 者:三浦しをん
出版社:新潮社
出版日:2007年5月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 三浦しをんさんの短編集。小説新潮やアンソロジーに書いた「恋愛短編」が11編収録されている。巻末の「初出・収録一覧」に、それぞれの短編のテーマが「お題」「自分お題」として載っているので、読む前でも後でも良いので見るといいと思う。

 その「初出・収録一覧」に「「恋愛をテーマにした短編」の依頼が多い」と書いてあり、不思議な感じがした。そんなに数を読んでいないけれど、今まで読んだ著者の作品からは「恋愛小説」のイメージはない。「風が強く吹いている」「仏果を得ず」「神去なあなあ日常」。どの作品の主人公も恋はする。でも「恋愛小説」ではない。直木賞受賞作「まほろ駅前 多田便利軒」には、恋愛の要素はあっただろうか?

 読み始めてすぐに「もしかしたら?」と気が付くのは、本書の物語は「普通の恋愛小説」ではないんじゃないか?ということ。誰かが誰かに恋したり愛したりすれば「恋愛」かもしれないけれど、相手が死んでしまっていたら?誘拐犯だったら?ペットだったら?、二人が姉弟だったら?女同士だったら?男同士だったら?世間的には許容範囲が広がったとはいえ、まだこれは「普通」ではないだろう。「恋愛をテーマにした短編」の依頼者の期待は、これで満たされたのか心配になってくる。

 「普通」じゃつまらない、という人にはバリエーション豊かで良いだろう。しかし、私は読んでいて、そわそわと落ち着かなくて仕方なかった。その中では、一対になっている最初の一編と最後の一編は、少しだけれど主人公を応援したくなった。私の許容範囲も少し広がっているようだ(笑)。

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2つのコメントが “きみはポラリス”にありました

  1. るるる☆

    確かに普通の恋愛小説じゃないですよね。
    でもみんな一生懸命誰か愛していることは伝わってきます。
    やっぱり三浦しをんは一味違う!懐が深い!と思えた大好きな小説です。
    私は誘拐犯の「冬の一等星」が一番好きでした。
    「私たちのしたこと」は切なくて、衝撃が一番大きかったです。

  2. YO-SHI

    るるる☆さん、コメントありがとうございます。

    なるほど「懐が深い!」ですか。たしかに、バリエーションの広さを
    感じます。いや奥の深さかもしれません。

    登場人物たちは、みんな世間的な「標準」からは外れてしまっている
    けれど、標準以上に真面目に恋愛しているところが良いですね。

    でも、私はどちらかと言うと、「神去なあなあ」みたいな爽やか系の
    しをん作品がいいなぁ。
     

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