博士の愛した数式

著 者:小川洋子
出版社:新潮社
出版日:2003年8月30日 発行 9月25日 3刷
評 価:☆☆☆(説明)

 2004年の、つまり第1回の本屋大賞第1位。2006年には映画化され興行収入12億円のヒット作となった。実は映画は前に見ていて「今さら」感を感じるのだけれど、本でも読んでみたくて手に取った。

 事故の後遺症で記憶が80分しかもたない数学者の「博士」。その家に家政婦として派遣された主人公の「私」。彼女は毎朝玄関で「新しい家政婦さん」として、博士に迎えられる。そして、博士は数学の話でしかコミュニケーションを取れない。「私」との初めての会話は「君の靴のサイズはいくつかね」だ。

 「私」の靴のサイズは24なのだけれど、それに何の意味があるのか?(そりゃ「足の大きさを表す」という意味はあるのだけれど)博士にかかれば24は「潔い」数字なのだ。何故なら4の階乗(1×2×3×4)だから。...「潔いかな?まぁそれで?」と思う人もいるだろう。
 しかし「私」の誕生日の2月20日の220と、博士の時計に刻まれたナンバーの284が「友愛数」と呼ばれる、滅多に存在しない組み合わせで「神の計らいを受けた絆で結ばれ合った数字」だ、という場面では、2つの数字にロマンチックなものを感じないではいられないだろう。

 本書とその映画がヒットした理由の一つに、このような数字のウンチクと面白さがあるのは否定しない。しかしそれは本書の魅力の入り口であり表層的なものだ。時に滑稽に見えてしまう博士の所作の裏にある、ひたむきさや子どもへの愛情と、それを感じることができる「私」との出会いと交流こそが本書の核心だと思う。

 ※映画やテレビなどを先に観ると、本を読んでいて、かなり鮮明に映像が浮かび上がってきます。今回は、寺尾聰さんと深津絵里さんがずっと会話していました。

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6つのコメントが “博士の愛した数式”にありました

  1. たかこの記憶領域

    博士の愛した数式 / 小川洋子

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    映画は何年か前に見ていたのに、原作は読んでなかった…。今更という感じもするけど、読んでみました。
    読み終わった感想は、
    数字をこんなふうに……

  2. たかこ

    YO-SHIさん こんばんは。
    私も映画の方が先だったので、小説では寺尾聰さんと深津絵里さんが会話をしていました。
    やっぱり一度映像で見てしまうと、イメージが固定されてしまいますね。
    でも、映画もけっこう好きでした。

    数字のうんちく、いろいろありましたが、面白いですよね。
    「天地明察」もそうでしたが、数学などが小説に出てくると勉強したくなります(^_^;)

  3. YO-SHI

    たかこさん、こんにちは。

    そうですね。私も映画も好きです。
    この本の場合は、映画も良くできていて、原作の雰囲気と
    うまくマッチしているように思いました。

    あの映画、実は私の街でロケしたんです。知っている場所が
    出てきて、それも親しみが湧く理由になってるんですが..
     

  4. hiraco24

    YO-SHIさん、おはようございます。
    ついったーから参りました!

    わたしは映画は観ないまま最近になって小説を読んだのですが、映画も良さそうですね。
    ぜひ観てみたいです。

    数学嫌いも数字に魅せられてしまう良作でしたよね^^
    博士の温かさが身に染みました。

  5. YO-SHI

    hiraco24さん、コメントありがとうございます。

    原作が気に入られたら、映画も雰囲気が生かされていていいと思います。

    数学もあんな風に教えてもらったら、ロマンさえ感じますよね。
    ルートがうらやましいです。

  6. itchy1976の日記

    小川洋子『博士の愛した数式』

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    今回は、小川洋子『博士の愛した数式』を紹介します。この本は、心温まる(heartful)美しい本だと思いました。この本の主要な登場人物は、家政婦とその息子(ルート)と博士である。博士は、1975年で記憶の蓄積が止まっている。記憶は、80分しか持たない。この本で出てくる事例でいうと、つまり、その当時の阪神タイガースの28番江夏豊は知っているが、トレードされた以降の江夏豊は知らない。
    この話の心温まるところは、一途な博士の姿である。家政婦とルートに数学…

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