飛ぶ教室

著 者:エーリヒ・ケストナー 訳:池田香代子
出版社:岩波書店
出版日:2006年10月17日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の11月の指定図書。海外の作品もいいんじゃないか?という意見もあって本書に決まりました。クリスマスに向かっていく今の季節にピッタリ。

 主人公は、ギムナジウムというドイツの寄宿学校に通う5年生たち。ボクサー志望のマティアス、秀才のマルティン、臆病なウーリ、詩人のジョニー、クールなセバスティアーン、の5人組。年齢にすると14~5歳だ。本のタイトルの「飛ぶ教室」というのは、物語の中で、クリスマス集会で上演する、ジョニーが書いた劇の名前。

 まえがきに、著者のメッセージがある「子どものころのことを、けっして忘れないでほしい。」 なんとストレートなメッセージだろう。飾りも比喩もなく、言いたいことを直に言葉にしている。

 時代は、おそらく著者が本書を書いた1933年ごろ。大人も子どもも懸命に日々を生きていたころ。ドイツはナチスが政権を取り、暗い時代へ突き進んでいたころだ。だから、今の日本の私たちや14~5歳の中学生たちとは違う世の中の話。それなのに、こうも活き活きとしたものが伝わってくるのはどうしてだろう?子どもたちが吐く息の白さまで見えるようだった。

 それは、14~5歳のころの心のあり様が、時代や国が違ってもそう変わらないからなのだろう。もちろん、すべてが同じというわけではない。ただ、仲間を大事に想う気持ちとか、その裏返しの他のグループとの反目とか、誰かに対するあこがれとか、なりたい自分になれない悩みとか、家族に対する想いとか、変わらないものは確かにある。そういったことが、まえがきのメッセージに劣らずストレートに伝わってくる。名著だ。クリスマスの贈り物にすると、良いかもしれない

※SNSの読書会では、訳による違いや訳者による「あとがき」のことが話題になりました。数多くの翻訳が出版されているようです。私が読んだのは、岩波少年文庫の新版です。この訳はなかなか良かったと思います(他の訳は読んでいないので、比較したわけではありませんが)。

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2つのコメントが “飛ぶ教室”にありました

  1. あまねママ

    名作です!!
    泣けました!!
    正直、児童文学がこんなに凄いとは思わなかったです。
    私は10年前にこの作品に出会ったんですが、
    今でもこの時期になると繰り返し読み返してしまいます。

  2. YO-SHI

    あまねママさん、コメントありがとうございます。

    そう、まさに名作。長く読み継がれていって欲しいと思います。

    できれば、主人公の彼らと同じ14~5歳の時に1度、
    大人になってからも再度、あまねママさんのようにくり返し
    読むといいですね。
    子どものころのことを忘れないように。

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