真夏の方程式

著 者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
出版日:2011年6月6日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者が生み出した天才物理学者の湯川の推理が光る、ガリレオシリーズの最新刊。長編では「容疑者Xの献身」「聖女の救済」に続く第3弾。

 今回の舞台は、玻璃ヶ浦という海辺の街。「玻璃」は水晶のことで、太陽に照らされた海の底が、いくつもの水晶が沈んでいるように見えることから、街の名前が付いた。言わばこの海は宝の海。しかしその宝の海を抱くこの街は寂れる一方だ。
 その街に降って湧いたのが海底資源開発の話。湯川はその調査の技術指導のために、この街に来た。そして開発に反対する女性、成実の両親が経営する旅館に泊まる。翌日、その旅館の宿泊客の男性が、堤防から転落した状態で遺体となって発見される..。

 今回の現場は警視庁の管轄ではない。これまでのシリーズに登場した、湯川の大学の同期で警視庁の刑事の草薙の出番はないかと思ったが、そんなことはない。被害者の身元から、事件は早々に警視庁へ東京へ、そして草薙へと結びつき、いつも通りの地道な活躍を見せてくれた。新人?の女性刑事の内海の捜査も頼もしかった。
 また、こちらはいつもと違って、子ども嫌いの湯川が、今回は小学校5年生の少年の恭平クンと気が合ったようだ。夏休みの自由研究の手伝いをしたり、宿題を教えてあげたり。「大学の物理学の先生に自由研究を手伝ってもらうなんて何と贅沢な」とか「湯川先生、実は子ども好き?」などと思ってしまった。

 伏線の仕込み方が見事だ。「そうだったのか」と何度もページを前に繰った。そして著者が繰り出す「新事実」に翻弄された。何かが分かる度に「そういうことか」と真相に近づいた気になった。しかしそれは真相の一部でしかないか、まったく真相とは関係ない、ということが最後まで続く。騙され通しの400ページだった。

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8つのコメントが “真夏の方程式”にありました

  1. りょうた

    「真夏の方程式」本当にいいですよね。
    湯川に変化が見えましたが、またそれが良かったと思います。
    ほんと伏線の仕込みも見事でしたね。
    いろんな意味で素晴らしい小説だと思いました。

  2. YO-SHI

    りょうたさん、コメントありがとうございます。

    りょうたさんのブログを拝見しました。東野さんの作品を
    たくさん読んでおられるんですね。

    私は、まだそんなに読んでないのですが、今のところ
    「ハズレなし」です。
     

  3. 笑う学生の生活

    湯川と少年

    小説「真夏の方程式」を読みました。
    著者は 東野 圭吾
    あのガリレオ 湯川シリーズ
    新作長編です
    今回もやはり読みやすく
    引き込まれますね
    ただ、肝心のミステリーとしては普通
    そこまでトリックも弱く・・・
    それよりも ドラマ部分が大きく
    それぞれが想う気持ち、……

  4. Hayabusa

    ガリレオシリーズをひさびさに読みました。
    伏線がいっぱい張られていて、
    読んでいて、飽きませんでした。

    最後の終わり方がああいった感じで終わったのも、
    ありなんだろうなと思いました。

  5. YO-SHI

    Hayabusaさん、コメントありがとうございます。

    殺人事件のミステリーなんですが、犯人を見つけて逮捕!
    というスッキリした終わり方ばかりが良いとは限らない、
    ということなんでしょうね。
    特に今回は、ああいった感じで「あり」だと思います。

  6. こみち

    東野圭吾 「真夏の方程式」 

    JUGEMテーマ:読書感想文nbsp;
    nbsp;
    ◆ガリレオ シリーズ
    nbsp;
     今回の事件では、関係者の知られたくない過去と忘れたい出来事が
     キーワードになっていました。環境問題のシンポジュームに参加した
     元刑事が死と遂げたところから犯人は、少年ではないかと疑っていまし
     た。事件に関係する実験だけでなく夏休みの宿題の実験をする湯川博士の
     生き生きとした…

  7. 【徒然なるままに・・・】

    『真夏の方程式』 東野圭吾

    夏休みを一人で玻璃ヶ浦にある親戚が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平は、電車の中で湯川と知り合う。湯川は海底鉱物資源開発を進める会社に頼まれ、地元との説明会に参加するため同じ電車に乗り合わせていたのだ。そして恭平と同じ旅館に泊まることを決めた。
    その翌日、宿泊客の一人が変死体で発見された。彼は定年退職した警視庁の元刑事で、説明会にも出席していたのだが、何故玻璃ヶ浦を訪れしかも説明会にまで参加していたのかは残された妻にもわからないという。
    恩人の死に疑問を抱いた上司の直々の特命を受けた草薙…

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