宇宙でいちばんあかるい屋根

著 者:野中ともそ
出版社:ポプラ社
出版日:2003年11月20日 第1刷発行 2004年2月1日 第3刷
評 価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の9月の指定図書。

 主人公は14歳の少女、つばめ。つばめが小さい頃に両親が離婚した。原因は母親が別の人に「恋をした」ので出て行ってしまったかららしい。しかし、つばめを引き取った父親はすぐに再婚。新しい母親とも、つばめはうまく行っている。まぁ、幸せな家族だ。
 でも、なぜか長い間一緒にいると居心地が悪くなってしまう。気づかい、いたわりあいながら「家族」というタペストリーを織っている感じ。時々、それに疲れてしまう。14歳の少女にも、いや14歳の少女だからこそ「一人の時間」を必要としているのだろう。

 物語は、つばめが「一人の時間」を過ごすビルの屋上をポイントとして展開する。そこはつばめが通う書道教室があるビルで、つばめは教室の後にしばらくその屋上で過ごす。ある日、そこで派手な出で立ちのばあさんと出会う。つばめが名付けて「星ばぁ」
 星ばぁは、下品で自分勝手で意地悪でがめつくてウソつきだ。中学生のつばめにお菓子やら弁当やらをせびる。「空が飛べる」と言い張る。でも星ばぁがつばめに向かって吐く言葉は、辛辣ではあるが飾りがないだけに、ウソがない。ウソつきの言葉に「ウソがない」なんて変だけれど。

 家族、隣人、学校、家から駅までの町。中学生のつばめにとっての「社会」の隅々までを、心くばりが行き届いた筆使いで描く。クラスメイトとの距離感や、三軒先の大学生の亨くんへの想いなど、14歳の少女の少し背伸びした心持ちが伝わってくる。

 そうそう、星ばぁのために、つばめは行ったことのない街に出かけていく。これは、つばめの世界の拡がり、つまり成長を象徴しているように感じた。

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