教えるな! できる子に育てる5つの極意

著 者:戸田忠雄
出版社:NHK出版
出版日:2011年6月10日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 いくつもの理由で、本書に興味があって手に取ってみた。仕事で小中学校の先生や子どもたちと関係があること。自分に中高生の娘が2人いること。だから、教育の問題は身近な興味の対象であること。著者が、以前にわが街の教育を考える審議会の委員をされていたこと。もっと以前には私の家族が著者の教え子であったこと。こうしたことから、著者がどんな考えの方なのか読んでみようと思った次第だ。

 「教えるな!」というタイトルを見て分かる通り、「常識の逆」を言うことで、著者のオリジナリティを発揮している。本書中にはその他にも、「立派な教師にならなくてもいい」「先生は聖職者ではない」「デモ・シカ教師もダメではない」「愛だの情熱だのと言う先生は適格性を欠く」といった、読む者を挑発するような意見が多く披露されている。
 確かに奇をてらう部分はあるが、それだけではない。例えば「教えるな」の裏には、「「学びたい」という飢餓感があって、はじめて教える効果が上がる」という考えがある。著者は「自ら学び、自ら考える」ように導くのが教育、と考えていて、「教えすぎ」はそれを阻害する元凶なのだ。

 読んでいて著者の考えには2つの核があると感じた。1つは、「子どもには自ら学びたい気持ちが元来備わっている」という前提の楽観主義。「子どもの自主性を信じて待てば良い」とも受け取れるこの考えは、時に楽観的に過ぎると感じた。
 もう1つは、「現在あるものは、あるものとして受け入れる」という現実主義。受験と合格をゴールとした「知識偏重」の教育のあり方は、著者の考えと相いれないはずだ。それなのに、随所で「それでは、難関大学突破など夢のまた夢です」といった、学歴礼賛的な言葉が顔を出す。「なんだ結局そうなのかよ」とダメ出しの一つもしたいところだが、「学歴主義が現実に存在する以上、それを活用する以外に道はありません」という著者の言葉も、また然りなのだ。

 そうそう、本書によると著者は現役の教師のころ、「自ら学び、自ら考える」ように導くために、書いてることに敢えて疑問を呈するなど、教科書を重要視しなかったそうだ。それで「どんな先生だった?」と、著者の教え子である私の家族に聞くと、「「戸田先生の授業は受験の役に立たない」と言われていた」という返事が返ってきた。...なるほど。

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