日本の問題

著 者:ピオ・デミリア 翻訳・構成協力:関口英子
出版社:幻冬舎
出版日:2011年10月25日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 本書は、日本在住30年のイタリア人ジャーナリストの著者が、3.11以後に東日本大震災の被災地と原発事故の周辺という「現場」を訪れたレポートだ。副題は「地震、ツナミ、放射能汚染の「現場」で見たもの」
 著者がその目で見た「現場」とは、震災から3日後(震災翌日に福島市へ向かったが、交通事情でたどり着かなかった)早朝の気仙沼や、福島第一原発から20キロ圏内で、立ち入りが禁止されている「警戒区域」などだ。

 震災と原発事故から約1カ月の間に、著者は何度も「現場」に足を運ぶ。「ジャーナリストならばて当然」なのかもしれない。しかし当時は、多くの外国政府が自国民に避難勧告を行っていたし、何より相手は放射能だ、身の守りようがない。そんな中で、福島第一原発の正門前まで行った著者は、例外中の例外だろう。

 帯には「日本のメディアでは語られない」とあるが、レポートの内容に重大な「新事実」があるわけではない。あれから今日でちょうど9か月、当初は隠されていたことも多かったが、かなり明らかになった。それでも「自分の目で見た」と言って伝える文章には、格別の切れ味と説得力がある。

 その切れ味はまず、大阪や福岡ひどい場合は香港から、センセーショナルに「黙示録」的な報道をする海外メディアに一太刀を浴びせる。次に、唯一の被爆国である日本の国民、つまり私たちの「原子力」への感覚に、鋭い突きを繰り出してくる。

 著者の母国イタリアは、国民投票の選択によって、過去20年間も原発が稼働していない国。経済界からの要請によって、稼働再開を模索した政権に対して、今年6月に再度94%の反対票でNoを突きつけた国だ。「感情的」とか「ヒステリック」とか、軽んじる声も聞かれるが、私は著者の「脱原発のススメ」に説得力を感じる。

 にほんブログ村「ノンフィクション」ブログコミュニティへ
 (ノンフィクションについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です