動的平衡

著 者:福岡伸一
出版社:木楽社
出版日:2009年2月25日 初版第1刷 4月10日第5刷
評 価:☆☆☆(説明)

 「生物と無生物のあいだ」の著者による、「生命」について考察する科学エッセイ。第2弾が出版されたと聞いて、第1弾を読んでみようと思い、手に取ってみた。タイトルの「動的平衡(Dynamic Equilibrium)」は、著者が前著の中で「生命とは動的平衡にある流れである」という使い方をした、著者の生命観のキーワードだ。

 私たちの身体は、固定して存在しているように見えるが、分子レベルでは驚くべき速さで「入れ替わって」いる。食物として外界から取り入れたものは分解されて、分子単位で体を構成するそれまであったものと置き換えられている。不変に見える骨や歯や脳細胞も例外ではない。

 少し視野を広げて見ると、分子レベルでは、外界→私たちの身体→外界、という流れの中に私たちはいることに気付く。質量や形状が変化することはないので、入ってくる一方で、同じ速さで分解されて体外へ排出され、一種の平衡状態を保っているわけだ。この流れの中の平衡状態を「動的平衡」と呼んでいる。

 本書は前著を受けて、「記憶」や「ダイエット」や「食品の安全」、「細菌とウィルス」の話などに話題を広げて、読みやすい読み物になっている。「あとがき」によれば、雑誌や会員誌の連載記事が元になっているそうで、なかなか興味深い連載だったろうと思う。やや「動的平衡」の捉え方を拡大しずぎに感じる部分もあるが、まぁ許容範囲としよう。

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