絵で見る十字軍物語

著 者:塩野七生
出版社:新潮社
出版日:2010年7月25日発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者による「十字軍物語」シリーズ4部作の第1弾。以前に紹介した「十字軍物語1」は、「1」とは付いているが、実は第2弾になる。第1弾の本書は、8次にわたる十字軍を俯瞰する画文集で、第1次十字軍から順に語る物語としての「十字軍物語」が3巻、その後に続く形になっている。

 本書は、19世紀の画家であるギュスターヴ・ドレが描いた、ペンの細密画を左ページに、右ページにその場面を示した地図と、著者による最大で半ページの解説、という見開きの99セットで構成されている。

 まず、ドレの絵の美しさに驚く。モノクロの写実的な絵で、明暗と奥行きや立体感が写真以上にある。この絵によるビジュアル化の効果は絶大で、まるで写真つきの「現地レポート」を読んでいるかのように、十字軍が真に迫って感じられる。(よく見ると、非常に細かい線で描かれていることが分かる。要らぬ心配だけれど、印刷業者はとても苦労させられたのではないかと思う。)

 著者の文章も良い。簡にして要を得たもので、「見開き」という制約の中で、絵の場面とその背景となる出来事まで、説明が行き届いている。本書1冊を読めば、十字軍について少し語れるようになりそうだ。

 ただ、「ビジュアル化とは簡略化のことでもある」と、著者がまえがきにあたる「読者へ、塩野七生から」で言うように、本書で語られなかった物語はあまりに多い。著者は、このシリーズをイタリア・オペラに例えて、本書を「序曲」とし、続く3作を「第一幕」「第二幕」「第三幕」と考えているそうだ。当然「序曲」が終われば「第一幕」の幕が上がり、これまで語られなかった物語が語られる。続きを読もうと思う。

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