ブリキの王女(上)(下)

著 者:フィリップ・プルマン 訳:山田順子
出版社:東京創元社
出版日:2011年11月30日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「マハラジャのルビー」から始まる「サリー・ロックハートの冒険」シリーズの外伝。シリーズは、「仮面の大富豪」「井戸の中の虎」と合わせて全4部作で完結している(今のところは?)。外伝なので、シリーズの主人公のサリーは、登場はするがストーリーの主要な部分には絡んでこない。

 時代は前作「井戸の中の虎」から約10か月経った1882年の夏。主人公はサリーの良き協力者であった作家兼探偵のジム。そして舞台は、これまでのロンドンではなく、ラツカヴィアという、オーストリア-ハンガリー帝国とドイツに挟まれた小さな王国。ジムはここの王位継承に絡んだ陰謀に巻き込まれる。

 面白かった。物語は、何度かの小さなヤマを繰り返して、終盤の大きなヤマへ収れんしていく。このシリーズでは、主人公は毎回絶体絶命のピンチに陥るのだけれど、今回もそれは踏襲された。王位継承や大国間の外交問題など、これまでにない複雑かつスケールの大きな話題が、ワクワク感を創出している。

 さらに、ストーリーに絡むので詳しくは言わないが、第1作「マハラジャのルビー」から再登場する人物がいる。「あの人はどうしたんだろう?」と、私も気になっていた人物で、ここで再会できてホッとしたというか、スッキリした。

 前作「井戸の中の虎」のレビューで、3作目のその本を起承転結の「転」と捉えて、「結」の「最終巻の次回作が楽しみだ。」と書いたのだけれど、最終巻が外伝だとは思ってなかった。サリーが主人公の最終巻を改めて読みたい、著者に是非書いて欲しい。

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