偽りの書(上)(下)

著 者:ブラッド・メルツァー 訳:青木創
出版社:角川書店
出版日:2009年3月31日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の前作「運命の書」と同じく、いわゆるノンストップ、ジェットコースターストーリー。何しろ展開が早い。目まぐるしく場所を変えながら、三つ巴か四つ巴の追いかけっこが展開する。何人かの視点が入れ代わる、全部で82もある短めの章が、テンポよく連なる。

 主人公はカル。米国の入国税関管理局(ICE)の元捜査官で、今はホームレス保護支援団体で働いている。ちなみに入国税関管理局は、9.11を受けて設立された機関で、密輸の摘発やテロの防止などを任務としていて、FBIやシークレットサービスと同様の、連邦法執行機関の1つだ。

 ある日カルが保護に向かった先にいたのは、腹を銃で撃たれた男。それは何と19年前に別れたきりになっていた、カルの父親のロイドだった。ロイドはどうも怪しげな品物の密輸に関わっているらしい。ICEの元捜査官にカルの前にロイドが現れたのは、偶然なのか誰かの陰謀なのか?

 始まりはこんな感じで、密輸に絡む陰謀劇のようなのだが、物語はまもなく大きな展開を見せ始める。「人類最初の殺人」とされる、聖書に記されたカインとアベルの物語。世界的なヒーローであるスーパーマンの誕生にまつわる秘話。この無関係に思える2つに関わる秘密結社。そして、カルの古巣のICEからも追われることに。さらに謎の「預言者」も..よくもまぁ、こんなに重ねたものだ。

 私は「運命の書」のレビューに、「それなりに面白かった」と、微妙な評価を書いている。それは宣伝に、「ダ・ヴィンチ・コード」を引き合いに出したことの弊害だった。それから「上下巻700ページは長すぎる」とも。本書も「ダ・ヴィンチ・コード」をチラッ思ったが、「同様のもの」を期待したわけではなかった。そして上下巻550ページは、ちょうどいいぐらいだった。

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