著 者:佐藤多佳子
出版社:講談社
出版日:2006年8月25日(1)、 9月21日(2)、10月24日(3) 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
2007年の本屋大賞、吉川英治文学新人賞の受賞作。私が本屋大賞を意識しだしたのが、2007年からで、その年のノミネート作品は「夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦」「風が強く吹いている/三浦しをん」「終末のフール/伊坂幸太郎」「図書館戦争/有川浩」「鴨川ホルモー/万城目学」「失われた町/三崎亜記」等々。
現在の私が大好きな作家さんの作品が目白押しで、本屋大賞が出会いのきっかけとなっって、私の読書傾向が形作られたのは明らかだ。その特別な年の大賞作品にも関わらず、これまで読まなかった理由は、1つには図書館で借りようと思ったら貸出中で、読むタイミングを失したのと、もう1つには3巻もあるので、ちょっと読むのを躊躇したことだ。その躊躇を今は後悔している。
主人公は神谷新二。高校生。中学まではクラブチームでサッカーをやっていたが、高校で陸上部に入って短距離の選手になった。第1巻はその1年の春からシーズン中を描き、第2巻は1年生のシーズンオフから2年生のシーズン中、第3巻はその後から3年生のシーズン中のインターハイ予選を描く。
読み終わって清々しい気持ちになった。陸上の経験や知識がある人が読めば、さらに違った感想や感慨があるのだろうと、少し悔しく思う。陸上は基本的には個人競技。新二は100、200mを走る短距離選手なのでタイムの更新が1つの目標。つまり過去の自分が相手なのだ。
ところが、物語は個人ではなく、人と人との関係を徹底して描く。新二を中心にして家族、親友、陸上部の同級生、先輩、後輩、顧問、他校の選手、監督...。短距離にも「4継」と呼ばれる100m×4の400mリレーがあって、これは正に団体競技だし。100mだって1人だけで競技するわけではないことがよく分かる。
新二と周囲の関係という広がりを空間軸、高校生活の3年間を時間軸として、新二(とその周囲)の逞しい成長を体感した。「3年間」を体感するためには、3巻分の長さが必要だった。
この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。
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こんにちは。
このシリーズ面白いですよね。主人公の親友にして、最大のライバルの存在、会話のやり取り、そしてレースの描写の躍動感。
このシリーズと誉田哲也氏の『武士道シリーズ』が、現在の所、僕が読んだ部活シリーズの二大巨頭です。
こういうレヴューを読むと、続きを読もうか迷いますね。私は1巻に関してはブツ切りの印象が非常に強かったので、そこで読むのを止めたままにしてあります―――が、最近、あの中途半端な自分のレヴューを読み直したところで、こんなレヴューを拝見してしまったので再チャレンジしようという気になりました。
フウガさん、コメントありがとうございます。
親友にして最大のライバルの新二と連。
スピンアウトで、連から見た物語なんかあれば面白いんじゃないかと
思っています。
連は、新二が思うのとは違う内面を持っているように思うんです。
「武士道シリーズ」は未読ですが、機会があれば、と思っています。
Medeskiさん、コメントありがとうございます。
Medeskiさんのレビュー記事も拝見しました。手厳しいご意見ですね。
3巻あるからと言って、読者も3巻読まなければならないという法は
どこにもないので、1巻だけで読むのを止めるのもアリだと思います。
でも、私の感じ方ですが、1巻だけと、3巻まで読み終わった感想は
ずいぶん違ったものになってました。
「一瞬の風になれ」佐藤多佳子
みなさんのおすすめ、「一瞬の風になれ」を読みました。
評判通りの傑作青春スポーツ小説でした!
中学時代はサッカーをやっていた新二は、高校では陸上部に入ります。
幼なじみの連は、才能ある短距離走……
こんにちは~。
一巻は、なんだか幼い感じの文章でこのままだと読むのがつらいなあと私も思いましたが、3冊目になってくると、成長したなあ、という文章になってくるのが、うまいと思いました。
一冊目で読むのをやめてしまうのは、もったいないと思います。
Medeskiさんも、ぜひ最後までお読みください。
牛くんの母さん、ご無沙汰しています。コメントありがとうございました。
文章の感じまで成長していましたか、それは気が付きませんでした。
ただ1冊目は、何となくありきたりで厚みのない物語に感じたのに、
3冊目では、そんなことを全く感じなかったので、文章的にも
成長してたんですね。
「俺」という1人称の作品だから、文章の成長は主人公の成長でも
ある。これは相当に巧みな仕掛けですね。