彷徨える女神

著 者:高橋浄恵
出版社:ヘレナ・インターナショナル出版
出版日:2012年6月3日 初版第1刷発行
評 価:☆☆(説明)

 出版社のヘレナ・インターナショナル出版さまから献本いただきました。感謝。

 著者は、この出版社の恐らく親会社にあたる総合リゾート運営会社の社長。本書が第一作だそうだ。左開きの横書きの装本。1行あたり十数文字ぐらいで改行される、叙事詩のような体裁。言葉や漢字の選択にも詩的なものを感じる。

 著者からの「はじめに」のメッセージの冒頭に、「本書は、私の心に木霊する虐げられし者、圧し拉がれ不条理に声を喪う者の魂の叫びを書いたものです。」とある。その言葉どおりに、登場人物の多くは虐げられ、不条理に痛めつけられる。主人公の少年カフカスは、母に殴られ「産むんじゃなかった」と詰られる。

 カフカスだけでなく、異母妹のハイヌヴェレも「罪の仔」と石を投げられ、(ちょっと普段は口にすることのない)酷い言葉で責め苛まれる。その他にも...。このブログでも何度か言っているように、私は、子どもがつらい目にあう話は、私自身がつらくなってしまうので苦手なのだ。物語の中とは言え、著者は何故に子どもをこんなに酷い目に合わせるのだろう。

 著者の目や心には、不条理で救いがたい世界が映っているのかもしれない。本書は、カフカスやハイヌヴェレに何かを象徴させた寓話で、それを語ることで「希望」や「生きる意味」を伝えているのかもしれない。しかし、私には不条理で哀しい気持ちが残ってしまった。カフカスの短いけれど幸せな時に見た草波に、生命の力強さと喜びを感じたことが救いだった。

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