アーモンド入りチョコレートのワルツ

著 者:森絵都
出版社:講談社
出版日:1996年10月20日 第1刷発行 2000年3月13日 第4刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「14歳からの哲学」の記事で書いたように、現在「文学金魚」という総合文学ウェブ情報誌の「10代のためのBOOKリスト」のための準備中で、その一環として読んだ。そして「14歳からの哲学」と同じく、本書も入試問題に頻出の書でもあるらしい。

 本書は表題作「アーモンド入りチョコレートのワルツ」と、「子供は眠る」「彼女のアリア」の3編を収録した短編集。

 収録順に紹介する。「子供は眠る」は、中学2年の男の子が、年に1回だけいとこたち5人だけで別荘で暮らす2週間の物語。男の子たちの序列意識や葛藤が描かれている。「彼女のアリア」は、中学3年の男の子が、今は使われていない音楽室で、同級生の女の子と出会う物語。何とも甘酸っぱい。「アーモンド入り..」は、中学1年の女の子が、風変わりな先生のピアノ教室で風変わりなフランス人と出会う物語。

 3つの短編には共通点がいくつかある。1つ目は、ピアノ曲をテーマにしていること。2つ目は、中学生が主人公であること。3つ目は、主人公にとって特別な場所・特別な時間の、特別な経験が描かれていること。

 1つ目の共通点は分かりやすい。各短編の扉で紹介されているし、必ず物語の中でその曲が流れる。ただ、私が音楽の門外漢だからか、その選曲の意味が分からないだけかもしれないけれど(ちなみに、どの曲も試しに聞いてみた)、他の2つの共通点の方が、この短編集全体を通して流れる、清々しさと切なさを決定付けているように思う。

 「子供は眠る」では別荘での2週間、「彼女のアリア」では火曜日の放課後の音楽室、「アーモンド入り..」では木曜日のレッスンの後。その時だけのドキドキするような特別な経験。でもその時間はあまりに短い。何よりも大人への入り口をくぐる前の「中学生」という特別な時は、あっと言う間に終わってしまう。

 本書の見返しのこの一文が、そのことを良く表している。
 「十三歳・十四歳・十五歳 —。季節はふいに終わり、もう二度とはじまらない。

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