禁断の魔術 ガリレオ8

著 者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
出版日:2012年10月15日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者の人気シリーズ「ガリレオ」シリーズの最新刊。シリーズ5作目の短編集で、「透視す(みとおす)」「曲球る(まがる)」「念波る(おくる)」「猛射つ(うつ)」の4つの短編が収められている。今回は初の全作品書き下ろし。

 「封筒の中の名刺を透視する」「双子の間に通じるテレパシー」「弾丸などの痕跡を残さずに遠くから壁に穴を開ける」などの、超常現象が物語の俎上に上がる。それを天才物理学者の湯川が、科学者としての知識と観察力で解き明かす、というお馴染みの展開。

 ただし、「曲球る」だけは少し趣向が違って、戦力外通告をされたベテランピッチャーを、色々な意味で湯川の知識が救うことになる。その知識が科学の知識だけではないところがにくい。他の作品も含めて、湯川の人間の心の機微を感じ取る感性が、物語に人情味を与えている。

 上に「4つの短編」と書いたが、3編は確かに数十ページ短編だけれど、「猛射つ」は150ページもあって正確には中編。ある事件に湯川が指導した母校の後輩が関わる。息詰まるような緊張感が漂う作品で、本のタイトル「禁断の魔術」もこの作品の中の言葉であるし、まぁ本書のメイン作品と言える。

 科学の研究目的に使えば「実験装置」でも、殺人や破壊に使えば「武器」。科学は容易に「禁断の魔術」になってしまう。それに図らずも関わってしまった湯川は、科学者として重大な決断をすることになる。

 にほんブログ村「東野圭吾」ブログコミュニティへ
 (東野圭吾さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

禁断の魔術 ガリレオ8”についてのコメント(1)

  1. 粋な提案

    「禁断の魔術ガリレオ8」東野圭吾

    湯川が殺人を?「自業自得だ。教え子に正しく科学を教えてやれなかったことに対する罰だ」。ガリレオシリーズ初の完全書き下ろし。
    前作を書き終えた時点で、今後ガリレオの短編を書くことはもうない、ラストを飾るにふさわしい出来映えだ、と思っていた著者が、「小説の神様というやつは、私が想像していた以上に気まぐれのようです。そのことをたっぷりと思い知らされた結果が、『禁断の魔術』ということになります」と……

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です