おやすみラフマニノフ

著 者:中山七里
出版社:宝島社
出版日:2011年9月20日 第1刷 2013年1月2日 第6刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 2009年「このミステリーがすごい!」大賞受賞作の「さよならドビュッシー」の続編。(ちなみに「さよならドビュッシー」は、橋本愛さん主演で映画化、1月26日(つまり来週)公開される:映画の「公式サイト」

 続編と言っても、主人公を始めとする登場人物のほとんどが変わる。共通する登場人物はピアニストの岬洋介(実は他にも何人かこっそりと潜んでいる)。このシリーズは、主人公が巻き込まれる事件を、脇役の岬が探偵役として解決するミステリー。だから、主人公も変わるし舞台も変わる。

 今回の舞台は、愛知音大という音楽大学。主人公は4年生でバイオリニストを目指す城戸晶。岬は大学の臨時講師という設定。冒頭の「プレリュード」で、いきなり時価2億円のチェロのストラディバリウスが盗まれる。それも24時間体制で警備・監視されている楽器保管室、つまり完全な「密室」から。

 この衝撃的な「プレリュード」の後、少し時間を遡って、しばらく晶らの学園生活が綴られる。ライバルとの才能の差に打ちひしがれ、就職の悩みに半ば押しつぶされ、それでも音楽を奏でることに一番の喜びを感じる。晶も学費の納入に苦心しながらも練習に励み、定期演奏会のメンバーに選ばれる。そこで冒頭の事件となる。

 ミステリーだから「謎解き」が1つの焦点ではあるのだけれど、本書の場合は「音楽小説」としての魅力の方が大きい。前作のレビューでも書いたけれど、本書からは「音楽」が聞こえて来る。「ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番」と聞いて、何のメロディも思い浮かばない私にも、音楽に身を任せているような感覚が湧く。「言葉」というものの可能性を強く感じる。

 ミステリーファンには物足りないかもしれないけれど、音大生たちの恋愛と友情、悩みと葛藤、反発と承認、青春群像劇の要素もあって良し。

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おやすみラフマニノフ”についてのコメント(1)

  1. 【徒然なるままに・・・】

    『おやすみラフマニノフ』 中山七里

    学祭の演奏会に向けて練習中の城戸晶ら音大生たち。この演奏会では学長であり、世界的にも著名で、国内最高齢ピアニストとして活躍している柘植彰良が演奏するとあって注目度が高く、プロへの切符を掴めるかもしれない大きな舞台なのだ。しかし完全な密室状態の中で保管されていた、時価2億円とも言われるストラディバリウスのチェロが何者かに盗まれた。更に第二、第三の事件が起こる。犯人は学内関係者か?そしてその目的は金銭か、演奏会の妨害か、それとも・・・?
    『さよならドビュッシー』に続いて、ピアニスト岬洋介が登場する…

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