著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:原島文世
出版社:早川書房
出版日:2004年9月5日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
背表紙に「ファンタジィの女王ジョーンズの若き日の傑作」と書いてある。前に紹介した「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」が、著者の子供向けの作品の第1作で、出版されたのは1973年。本書の英国での出版は1975年だから、最初期の作品と言える。まぁ著者は1934年生まれだから、そのころは40代。「若き日」と言うのかどうか、意見の別れるところだけれど。
物語は主人公の「天狼星シリウス」が被告として出廷する裁判のシーンから始まる。この「シリウス」とは、今の季節に南の低い夜空に輝く星の、あのシリウスのこと。この物語では、夜空の星々がそれぞれに人格を持っている。シリウスは高い階級の「光官」であったが、罪に問われて有罪となり、その罪を償うために地球へ送り出された。犬の姿となって。
シリウスは記憶も失って、生まれたばかりの子犬となって人生?をやり直す。自分一匹だけで生きていけるはずもなく、いきなり生命の危機を迎えるが、そこを人間の少女キャスリーンに救われる。その後、太陽やら地球やら(もちろん彼ら?にも人格がある)に助けを得て記憶を取り戻し...という物語。
辛口のユーモアや皮肉が著者の作品の持ち味の一つ。キャスリーンは父親が刑務所に入っている間、親戚の家に預けられている。その親戚がまぁイヤなヤツで、「こんな人子供の本に登場させていいのかな?」という感じなんだけれど、実は「ダメな大人」は著者の作品の定番。それは最初期作品からそうだったわけだ。
ちなみに、シリウスは英語では「Dog Star」だからシリウスが犬になるのは、言葉遊びというか自然な成り行きでもある。(そういえば、ハリーポッターでもシリウス・ブラックが犬に変身していた)。それから原題の「Dogsbody」は「犬のからだ」だけれど、英語では物語に関連する別の意味もあるそうだ。
この本の訳者は、以前にコメントをいただいたことのある原島文世さん。上の「ちなみに」以下は、原島さんによる「あとがき」の受け売りだ。ご本人は「読まなくもていい」なんて書かれているけれど、本書を読んだあとに是非「あとがき」を読んで欲しい。本書が一段深く理解できるようになるから。
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