著 者:金丸弘美
出版社:NHK出版
出版日:2013年8月10日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「田舎力」とは、自然、食、景観、人、職人技、などの地域の資源を、上手に活用して「地域おこし」に結びつける力のことを言う。「田舎力のある人」は、知恵と工夫でものづくりを実践したり、地域にあるもののよさをうまく引き出したりし、自らの思いを語り愛情を持って「地域づくり」に取り組んでいる。
著者は「地域活性化アドバイザー」として全国を飛び回り、講演やアドバイスを行っている。専門のテーマは「食と環境からの地域再生」。本書はその活動で、全都道府県、数百の地方自治体を訪れて得た知見をまとめたもの。数多くの事例の紹介と共に、専門である「食」をテーマとした地域おこしについては、実践的な手法がで詳細に紹介されていて、たいへん有用な本だ。
実践的な手法の一部を紹介すると「地元食材のテキストづくり」が筆頭にあげられる。「テキスト」とは、その食材についての歴史、品種、特徴、栽培法といった基礎データはもちろん、加工法、料理、出荷窓口、生産地、栄養価、味、香り、見た目などを、誰でもわかるように解説した資料のこと。
「食」に限らず、自分たちはその良さが分かっていても、それを外の人に伝えるのはなかなか難しい。言葉で書いた手渡せるものがあれば前に進みやすいだろう。いやその前に、このテキストづくりの作業を通して、自分たち自身が再発見することも多いだろうし、多くの人が関わることでネットワークもできる。紙を並べて眺めることは、アイデア出しの常套手段でもある。一石二鳥にも三鳥にもなる。
それから、サブタイトルの「(小さくても)経済が回る」は、大事なことだ。「こんなことまで経済か」と嘆息する向きもあるだろう。確かに金儲け主義では地域おこしはできない。しかし、自前の財源がなければ事業が継続できない。補助金頼みで一過性のイベントに終わった事例も多い。「経済」の重視は、「失敗の事例」も多く知っている著者の経験から導き出されたものだろう。
※たった今、報道ステーションで、新潟県十日町の限界集落に移住した、坂下可奈子さんを紹介していて、彼女の口からも「小さくても(経済が)回る」という言葉が出てきた。改めて、これがキーワードなんだと思う。
参考:坂下可奈子さんのブログ「きぼうしゅうらく」
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