新参者

著 者:東野圭吾
出版社:講談社
出版日:2013年8月9日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 これまでに9作品が出版されている、「加賀恭一郎」シリーズの1冊。本書は「週刊文春ミステリーベスト10(2009年)」と、「このミステリーがすごい!(2010年)」のそれぞれ第1位。2010年には、テレビドラマ化されている。シリーズにはドラマ化、映画化されたものがいくつかあり、それを見たからかシリーズ作品を何冊か読んだような気がしていたが、読むのはこれが初めての作品。

 主人公は、加賀恭一郎、本書では日本橋署の警部補、いわゆる「所轄」の刑事だ。舞台は日本橋の人形町交差点周辺。東京のド真ん中にあって、ビルが林立する街なのだけれど、不思議なことに「下町」の風情と人情が残り、昔ながらの小さな商店も軒を連ねる。物語は、そうした小さな店の一つ一つを舞台にした短いエピソードを重ねた9つの章で、殺人事件の捜査を描く。

 テレビドラマ「新参者」のナレーションの一部を紹介する。「人は嘘をつく、罪から逃れるため、懸命に生きるため、嘘は真実の影」。この物語のキーワードは「嘘」だと思う。すべてのエピソードで、警察の取り調べに対して誰かが嘘をつく。

 ただし、そのほとんどすべてが「誰かを気遣い守るための嘘」。加賀は、その嘘の影にある「真実」を明らかにする。「真実を暴く」という言い方もあるが、本書については「暴く」という言葉は、乱暴すぎて相応しくない。加賀によって明らかにされた真実は、ついた本人や関係者を慰めるからだ。それは、真犯人でさえ例外ではない。

 私は、これまでに読んだ著者の作品のレビューに、「人情」という言葉を度々使っているけれど、本書はその「人情」が全開の物語。謎解きの小気味よさとともに、ホロリとする人情話が楽しめる。

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