著 者:小野不由美
出版社:講談社
出版日:2000年7月15日 第1刷発行 2004年3月19日 第12刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「月の影 影の海」「風の海 迷宮の岸」に続く、「十二国記」シリーズの第3作。主人公は前2作にも登場した、「雁」の国の延王・尚隆とその補佐を務める麒麟・延麒の2人。ただし時代は前2作から遡ること約500年、尚隆が「雁」の国の治世を始めて20年の時。
物語の発端はさらに18年前の偶然の邂逅。延麒は妖魔と呼ばれる魔物に乗って空を飛ぶ、人間の少年の更夜と出会う。妖魔はその本性として人間に馴れることがない。ましてやその背に人間を乗せて飛ぶことなどありえない。しかし、更夜とその妖魔は強い絆で結ばれていた。
そして物語の現在。先王の末期に荒廃を極めた「雁」の国は、尚隆の治世の20年で目に見えて復興を遂げていた。尚隆が有能な為政者である以上に、側近の官吏たちが更に有能だった。なぜなら、尚隆は良く言えば豪放、悪く言えば出鱈目な男だったからだ。お忍びで街に出かけて民と交わることは好きだけれど、朝議と呼ばれる御前会議はすっぽかして出席しない。
そんな風だから、全体としては国の復興が成っていても、国の隅々を見れば大事な事業が滞っている。それを恨みに思う地方もある。都から離れた「元州」では反乱の気配。こんな状況で、延麒は18年ぶりに更夜の訪問を受ける...後から振り返れば、これが新たな騒乱の幕開けだった。
王宮には王宮の、反乱を起こそうとする元州には元州の理(ことわり)がある。民に近いところにいる元州の領主が説く理の方が、真に人々のためになるように思えるのだが、ことはそう単純ではなかった。
読み進めるほどに、人間の内面が深々と掘り下げされる。善政の影に隠れた後ろ暗い闇。思いのほか重く鋭い刃を突きつけられた感じだった。
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