「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法

監修者:鈴木博毅
出版社:マガジンハウス
出版日:2013年9月5日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さんから献本いただきました。感謝。

 言うまでもなく本書が言う「空気」とは、しばらく前に流行った「KY(空気が読めない)」の「空気」のこと。例えば、連敗中のスポーツのチームを覆う重々しい「雰囲気」や、結論が最初から分かっている会議の「暗黙の了解」など。

 重々しい雰囲気を払拭すれば勝てるチームになれる。暗黙の了解を作り出せれば結論を自由に導き出せる。このように「空気」を変える方法が分かれれば、本書のタイトル通りに「思い通りに人を動かす」ことができる。

 タイトルを見れば、本書にはその「空気を変える方法」が書いてあると思うだろう。当然だ。しかし、そう思って読むとガッカリするかもしれない。その「空気を変える方法」は、最終章になるまで待たなくては出てこないからだ。

 本書の他の大部分は「空気」についての事例研究と解説だ。そう思って読めば、なかなか読み応えのある本だった。また、プロローグの1行目で著者自身が、山本七平さんの著書で1970年代に出版された「「空気」の研究 」を紹介している。もしかしたら本書は、この本へのオマージュの意味もあるのかもしれない。

 だからと言って、手っ取り早く「空気を変える方法」を知りたい人は、最終章だけ読めばいい、とはならない。分量のアンバランスを感じないわけではないが、前段の「事例研究と解説」が必要なのだ。最終章だけではその意味するところがしっかりとは分からないだろう。

 最後に。他の本の著者の複数から聞いたのだけれど、本のタイトルは、出版社の広告宣伝の範疇だそうだ。内容に対してタイトルに違和感があるのは、そういった事情かもしれない。このタイトルには確かに吸引力がある。

 ここからは書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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 本のタイトルと同様かそれ以上の確率で、帯のコピーも出版社で付けるのでしょう。この本の帯に「煮詰まった空気をガラッと変えよう!」と書いてあります。ですが、「煮詰まる」は、「討議・検討が十分になされて、結論が出る段階に近づく」という意味で、ガラッと変える必要はありません。

 もちろん、ここでは「行き詰まる」という意味なのでしょう。日常会話でもよく耳にします。いいアイデアが出なくて「あぁ煮詰まってしまったぁ」と言ったりします。さすがに私も、そんな時に「「煮詰まる」というのは本来は..」なんて言ったりしません。空気を読みますから(笑)。

 今は「行き詰まる」の意味を載せる辞書もあるそうですが、まだ、これは誤用だとする意見が主流なようです。その前提で言えば、出版社は言葉を扱い言葉を残す仕事なのですから、もっと言葉を大事にして欲しいと思います。

 ちなみに著者自身は、本書の本文の同様の場面で「行き詰まる」という言葉を使っていますね。

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