泣いた赤おに

著 者:浜田廣介 絵:梶山俊夫
出版社:偕成社
出版日:1993年1月 1刷 2011年5月 28刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 ちょっと周辺で話題になったので読み直してみた。童話作家の浜田廣介さんの代表作。以前から学校の教科書にも採用されていたはずだから、ご存知の方も多いと思う。ちょっと調べてみたところ、今も小学校2年生の国語の教科書(教育出版社)に収録されているようだ。

 主人公は赤おに。人間とも仲良く暮らしていきたい、と思って自分の家の前に立札を立てる「ココロノ ヤサシイ オニノ ウチデス。ドナタデモ オイデ クダサイ。オイシイ オカシガ ゴザイマス。オチャモ ワカシテ ゴザイマス。」

 人間たちは「まじめな気もちで書いたらしい」とは思ったものの、結局は「だまして、とってくうつもりじゃないかな」と言って、逃げて行ってしまう。その出来事に赤おにが自暴自棄なっているところに、友だちの青おにがやってきて、一計を案じる....。

 ご存知の方も多いだろうから、この先は省略。ご存知ない方は是非一読を。どうしても今すぐ知りたい方は、Wikipediaで紹介されているので参照いただきたい(文学作品をネットで結末まで紹介してしまうのはどうかと思うが)。

 「めでたしめでたし」では終わらない。どうしてこんなことになったのか?どうすれば良かったのか?大人になるとどうしても「正解」を求めてしまいがちだ。「童話」だから、何かしら分かりやすい「意味」があるはず、と思うのかもしれない。

 でも、本書には少なくとも分かりやすい意味や正解はない。絵本にしては量の多い文章は、細かい情景だけではなく、赤おにと青おにの心情を要所で描いている。著者は思いのほか、この物語を周到に創ったようだ。サッと読んで簡単に見つけた「正解」は、再読すると「そうじゃなかった」と思うことになる。

 よければやはりWikipediaではなく一読を。簡単には見つからない「正解」を探してみるのも悪くない。その際は、たくさんの版が出ている中で「原作全文を載せている」ものがおススメ。上に紹介した偕成社版は、巻末に「絵本化のための一部省略・再話等はしておりません」と書いてあった。

 この後は、書評ではなく「泣いた赤おに」についてのヨモヤマ話です。お付き合いいただける方はどうぞ。

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 「分かりやすい意味や正解はない」からか、批判する人もいるようです。実はこの物語には不遇の時代もあったようです。ネットに記事は残ってないようですが、産経新聞(2003.2.9)の「時代に翻弄される「泣いた赤おに」一時は排斥運動で消える」という記事に詳しいです。

 まぁ、そんな時代は過去のものになって、今でも度々メディアに取り上げられてもいます。先月も読売新聞の「名言巡礼」のテーマになっていました。2年ほど前には、同じく読売新聞の「名作うしろ読み」で、斎藤美奈子さんに取り上げられていました。(こちらは、いずれ単行本に収録されるはずです)

 また、画家で絵本作家の安野光雅さんは、この物語の挿絵を描いたことがあるそうです。ずっと前に読んだ「ZEROより愛をこめて」に書いてありました。それから田中渉さんの「天国の本屋」には、「泣いた赤おに」の朗読シーンがあって、これは泣かせますよ。

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