第九軍団のワシ

著 者:ローズマリ・サトクリフ 訳:猪熊葉子
出版社:岩波書店
出版日:1972年7月10日 第1刷 1984年11月5日 第4刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 上橋菜穂子さんが、影響を受けた作家としていつも上げられるのが、著者であるサトクリフ。そして「明日は、いずこの空の下」で、数多い作品の中から3つ選んだ中の一つが、この「第九軍団のワシ」。どんな物語なのか楽しみに読んだ。

 舞台は2世紀のイギリス。ローマ帝国のブリテン平定の北方前線への圧力が強まっていたころ。主人公はマーカス。ブリテン南西部の町の守備隊の司令官として赴任してきた。まだ20歳ぐらいの青年だった。

 マーカスの父親も軍人だった。第九軍団(ヒスパナ軍団)という歴史ある部隊の第一大隊長だった。しかし12年前にその第九軍団は、ブリテン最北部の氏族を平定するために進軍したのち、忽然と消息を絶ってしまっていた。副司令官でもある父親が守っていた、第九軍団の象徴である黄金の「ワシ」の行方も分からなくなっていた。

 物語は、マーカスの負傷・軍団からの離脱から、療養を経て「ワシ」の探査行を縦軸に描く。そこに、後に無二の友となるエスカ、隣家の少女のコティアらとの出会いと関係の発展横軸に、さらに、征服者であるローマ人に対する、被征服者のブリテン人の複雑な感情を背景にして、重厚な作品となっている。

 上橋さんがのめり込んだのも分かる気がする。これまで私は著者の作品として何冊か読んだのだけれど、「アーサー王」や「オデュッセイア」など、原典のある作品ばかりだった。それも良かったのだけれど、オリジナル作品はさらに良かった。

 なんと、映画にもなっていた。
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2つのコメントが “第九軍団のワシ”にありました

  1. 日月

    あまり日本人になじみのない時代の話ですが、読んでいるうちに惹きこまれていきました。風や匂いやスピード感などが体感できるような文章で、なるほど、上橋先生が選んだわけがわかるような気がします。シリーズ全部読んでみたくなりました。

  2. YO-SHI

    日月さん、コメントありがとうございます。

    日月さんのブログを拝見しました。そこでも書かれているとおり、
    上橋菜穂子さんの作品への影響が、この本には伺えますね。
    私も、少しずつシリーズを読んでいこうと思っています。

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