マーケティングと共に フィリップ・コトラー自伝

著 者:フィリップ・コトラー 訳:田中陽、土方奈美
出版社:日本経済新聞社
出版日:2014年8月25日 1版第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 「マーケティングの神様」とも称される著者の初めての自伝。2013年に連載された日本経済新聞の「私の履歴書」が基になっている経緯もあって、日本でのみ出版された。

 1931年生まれの著者は、御年83歳。先月、東京で開かれた「ワールド・マーケティング・サミット」のために来日された。本当にお元気だ。処女作「マーケティング・マネジメント」の出版が1967年というから、実に半世紀もマーケティングの世界で第一人者であり続けているわけだ。

 本書は「自伝」であるので、その生い立ちから書き起こされている。両親はウクライナからの移民で英語も話すこともできすにアメリカの地を踏んだという。生まれ育ったシカゴは、貧富の差が大きく、アル・カポネらが暗躍していた。

 さらに、結婚直後に研究のために渡ったインドでは貧困の問題が深刻だった。著者の考えるマーケティングが、企業の成長・繁栄の先に「より良き社会」の実現を目的としているのは、こうした生い立ちや経験によるものなのだろう。

 親交のあった人のことも多く書かれている。著者の博士課程修了の審査委員会には、後にノーベル賞を受賞したポーール・サミュエルソンとロバート・ソロー。日本で「もしドラ」で有名になった、ピーター・ドラッカーからの「お話をしませんか」という誘いには、翌日の朝一番の飛行機に飛び乗った。「神様」にも先生や尊敬する人がいたわけだ。

 また、著者の「履歴書」は、マーケティングの歩みそのものなので、本書はマーケティングの変遷や概観をつかむのにとてもいい。折々の著書も紹介されているので、気になった話題があれば、そこで紹介されている本を読んでみればいいだろう。

 実は私は、大学ではマーケティングを専攻していた。もう30年も前のことになる。多くのマーケティングゼミがそうであったように、「マーケティング・マネジメント」が教科書だった。今も我が家の本棚にある。本書によれば、第14版となって今も発売されているらしい。「古典」ではなく「教科書」として、半世紀近く使われるとは..言葉もない。

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