破門

著 者:黒川博行
出版社:角川書店
出版日:2014年1月31日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 2014年度上半期の直木賞受賞作。寡聞にして著者のことを知らなかった。本書は「疫病神」シリーズと呼ばれるシリーズの第5作であるらしい。

 主人公は二宮。「二宮企画」という建設コンサルタント会社を営む39歳。建設コンサルタントの業務は、建設に関わる計画や設計、調査などだけれど、「二宮企画」のはちょっと違うらしい。建設現場に暴力団の妨害が入らないように話をつける仲介で、主な収入を得ている。

 二宮自身は堅気だけれど、こんな商売なのでヤクザとの関係が密接だ。それに二宮の亡くなった父親はヤクザの大幹部だった。そんなわけで、二宮のところには二蝶会の桑原というヤクザが出入りしていて、「危ない話」に二宮を巻き込む。シリーズ名の「疫病神」は桑原のことだろう。

 今回の「危ない話」は映画製作への出資話。日本と韓国が舞台のスパイ映画の製作に、二蝶会の若頭と桑原が出資する。昔、桑原と一緒に北朝鮮に渡ったことがある二宮も協力しろ、というわけだ。シナリオライターに会って質問に答える、それぐらいの協力だったはずが、「疫病神」の桑原に引き回されてヤクザの抗争にはまり込んでしまう...

 面白かった。直木賞という「大衆小説作品に与えられる文学賞」にふさわしい。ヤクザの抗争を描いているので、殴り合いもあるし血も流れる。それでも重苦しくならず、どこか軽快な感じがするのは、桑原の人物造形によると思う。

 桑原は、どうしょうもない極道だ。喧嘩っぱやい「イケイケヤクザ」なのに、損得勘定に長けていて、誰にでも平気でウソをつく。周り中に迷惑をかける。堅気の二宮を引き込んで舎弟のように使う。でも、ギリギリのところで止まって一線を越えないことと、意外なほど真っ直ぐな性根が垣間見える。

 ひどい目に会い、周り中から「縁を切れ」と言われながらも、二宮がズルズルと付き合っているのは、桑原のそういうところが分かっているからかもしれない。(もちろん、桑原みたいな男が、本当に近くにいたら、こんなこと言ってられないけれど)

※2015年1月にスカパーで、北村一輝さん、浜田岳さん主演でドラマ化されるそうです。
BSスカパー「破門(疫病神シリーズ)」公式サイト

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3つのコメントが “破門”にありました

  1. igaiga

    こんにちは(´∀`)
    私も初めましての作家さんでした。
    しかもシリーズ途中じゃないですか。
    「国境」(←妙に北朝鮮北朝鮮と言っていた話が書いてあるようです)
    が読みたいーと思ってます。
    最初は「二宮って巻き込まれてるなー。気の毒になー」と思っていたのですが、
    この人はこの人で結構な心臓の持ち主だなと思った次第です。
    いろいろと読んだみたいなーと思わせる作家さんに出会いました(´∀`)

  2. igaigaの徒然読書ブログ

    「破門」 黒川博行

    破門 黒川博行
    映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪した詐欺師を追い、邪魔なゴロツキふたりを病院送りにした桑原だったが、なんと相手は本家筋の構成員だった。組同士の込みあいに発展した修羅場で、ついに桑原も進退窮まり、生き残りを賭けた大勝負に出るがー!?疫病神コンビVS詐欺師VS本家筋。予想を裏切る展開の連続で悪党たちがシノギを削る大人気ハ……

  3. YO-SHI

    igaigaさん、コメントありがとうございました。
    お返事が遅くなって申し訳ありません。

    二宮は二宮でそのへんのチンピラには負けない図太さですね。
    組に所属してないから後ろ盾がないのに、よくあんなこと
    できるなぁ、と思います。

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