ネットが生んだ文化

監  修:川上量生
出版社:KADOKAWA
出版日:2014年10月26日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 新聞の書評欄で知って興味を持ったので読んでみた。本を読んでいると時々深く印象に残る一文に出会うことがある。本書にもそんな一文がある。

「どんなにネットに現実世界が流れ込んでも、リア充勢力が多数派になっても、ネット原住民の影響力が低下することはない。なぜなら、彼らは暇だからだ。

 本書は、ニコニコ動画の生みの親である川上量生さんが監修者となって、ネットの文化を浮き彫りにしようとする本だ。ネットに造詣の深い8人の著者が、「ネットの言論空間」「リア充対非リア」「炎上」「祭り」「コピペ」といった様々な切り口で、ネット社会の来し方行く末を斬る。

 本書で初めて知ることができたことはとても多い。特に「炎上」について。様々なきっかけが「炎上」を引き起こすことは知っていた。社会のルールやマナーに違反する発言が、集中砲火的に非難(罵詈雑言)を浴びることがある。しかし、そこには少数の「炎上させる人」と多数の「炎上させられる人」が存在するとは知らなかった。2ちゃんねる上のほとんどの炎上事件の「実行犯」は5人以内で、たった一人という場合も珍しくないらしい。

 様々な出来事に対する「まとめサイト」が数多くあることも知っていた。炎上事件を積極的に取り上げるサイトもあって、これによって情報の伝播力が高まり、さらに大規模な炎上へと発展する。しかし、これらのサイトの多くでは、アフィリエイトによってアクセスを稼いで収入につなげていることは知らなかった。「炎上」は様々な思惑を持った人が加わって、意図的に「引き起こされている」のだ。

 全く関係のない出来事なのに、煽られて怒りをかきたてられる人。「釣り見出し」だけを見て反応して怒りのコメントを残す人。そういう人は「炎上させられる人」で、誰かに利用されている。....私たちは、インターネットを上手に使えるほどには成熟していないんじゃないか?前々から思っていたことだけれど、さらに強くそう思った。

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