編訳者:村上春樹
出版社:新潮社
出版日:2014年10月10日 発行
評 価:☆☆☆(説明)
本書は、ジャズの愛好家としても知られる村上春樹さんが、一人のジャズピアニストについての文章を多方面から集めて編んだ本。そのピアニストの名はセロニアス・モンク。
セロニアス・モンクは1940年代から70年代まで活躍した。後に「ビバップ」と呼ばれる即興演奏を主体にしたジャズの一形態を練り上げたとされる。ただ、彼の登場時には先進的すぎて周囲が理解できなかったようだ。ちょっと長いけれど、本書から引用する。
「彼の音の選択はちょっとずれているみたいに聞こえた。しかし彼はそのワイルドなハーモニーの感覚を通して、ぶつ切り風のリズム感覚を通して、作曲家のユニークな構造感覚を通して、最終的にはそれぞれの音の選択を正しいものにしてしまった。それらの感覚はすべて、完全にどこまでも彼独自のものであり、非の打ち所がないのと同時に、まさに常軌を逸していいた。」
本書中に何度もそう評されているけれど、つまり彼は「天才」だったのだ。天才は当初は理解されない。本書は、そんな中で早くから彼を理解し献身的な支援を与えた人々の、「セロニアス・モンク評」を集めている。
正直に言って、読み始めはつらかった。ジャズはおろか音楽的な素養も知識もない私にとって、名も知らないジャズピアニストの評伝を延々と読むのは、忍耐力を試されているような感じだった。
ただ、読み進めていくと、とても読みやすくなった。様々な人がバラバラに書いた文章なので、同じエピソードが少し角度を変えて何度も触れられる。しかしその効果として、立体的な像を結ぶように、マイルズ・デイビィスや、ジョン・コルトレーン(その名前ぐらいは私も知っている)の先を行って影響を与えた、セロニアス・モンクの姿が立ち上がってくる。
最後に。表紙のイラストは、今年3月に急逝された安西水丸さんへのオマージュとなっている。
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