著 者:伊坂幸太郎
出版社:光文社
出版日:2015年2月20日 初版1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
伊坂幸太郎さんの最新書き下ろし長編。
今回の舞台は「地域安全対策地区」に指定された仙台。「地域安全対策地区」には「平和警察」という組織が設置され、「危険人物」の早期発見と犯罪の未然防止に取り組むことによって、地域の安全を守る。「早期発見」の方法は一般住民からの情報を得ること。早い話が「密告」を受け付けることだ。
本書は3部構成になっている。第一部は、様々な事件が紹介される。上級生にいじめられる高校生。平和警察の取り調べを受ける男性。隣人が平和警察に連行された男性。...第二部は、平和警察の部署に配属された新人警察官から見た平和警察の活動。第三部は、平和警察によって監視カメラが設置された、理容店の店主を主人公とした物語。
書誌データでは「らしさ満載、破格の娯楽小説!!」と紹介されている。「娯楽小説」なのだから楽しめばいいのだろう。でも私はあまり楽しめなかった。善良な市民を、いい加減な密告を基に連行し、人権を無視した取り調べで自白させて、首切りの公開処刑にする。「娯楽」にはできなかった。
「火星に住むことを選びたくなるぐらい酷い世界」という含意だとは思う。こんな世界にも「正義の味方」はいて、悪の権化のような「平和警察」に立ち向かう者もいる。なかなかユニークなキャラクターも登場する。方々に伏線もある。「らしさ満載」については「満載」は言い過ぎのように思うが「らしい」とは言える。
「らしい」で言えば、伊坂さんは時々「強大な権力」を描く(「モダンタイムス」や「ゴールデンスランバー」など)。それから「闇」や「得体のしれないモノ」を描くこともある。「黒伊坂」作品と呼ぶ人もいる。そういった作品が好き、という人もいるので、本書もそういう読者の支持を得るかも。
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「火星に住むつもりかい」伊坂幸太郎
この状況で生き抜くか、もしくは、火星にでも行け。希望のない、二択だ。
密告、連行、苛烈な取り調べ。
暴走する公権力、逃げ場のない世界。
しかし、我々はこの社会で生きていくしかない。
孤独なヒーローに希望を託して――。
らしさ満載、破格の娯楽小説!
住人が相互に監視し、密告する。危険人物とされた人間はギロチンにかけられる―身に覚えがなくとも。交代制の「安全地区」と、そこに……