ツナグ

著 者:辻村深月
出版社:新潮社
出版日:2010年10月30日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 2011年の吉川英治文学新人賞受賞作。2012年10月に松坂桃李さん主演で映画化。2014年2月現在で69万部のベストセラー。この前に読んだ「ハケンアニメ」が面白かったので読んでみようと思った。

 「この世」の私たちを死者と引きあわせることができる者、それが「使者(ツナグ)」。本書はこの「使者」を巡る様々な人間を描いた連作短編。

 使者に「誰々に会いたい」と依頼すると、使者はそれに応じるかどうかを死者に聞いて、諾となれば面会が叶う。死者に会えるのは人生で一度きり。死者の方もそれは同様で、一度誰かに会うともう他の誰かには会うことができない。さらには死者の方から会う人を指名することもできない。

 物語では、自分を介抱してくれたアイドルに会いたい女性、亡くなった母親に会いたい男性、親友だった同級生に会いたい女子高校生、自分の元から急に姿を消した恋人に会いたい男性、などが登場する。

 「人生で一度きり」というルールが要になって、物語を締めている。「愛するあの人にもう一度会いたい」という理由だけでは「一度きり」のチャンスは使えない。秘密とか心残りとか、もっと別の理由があって、彼らは使者にコンタクトしてくる。時にその理由は業の深いものだったりする。また「使者」自身にも抱えた事情がある。

 面白かった。死者の方も「一度きり」。それを受けたのだからか、死者の方は一様に余裕がある。楽しそうでさえある。常に「死」を意識しなくてはならない物語なのに、暗い感じがしないのは、面会に来た死者が持つ明るさのせいだと思う。

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